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欲したのは目が眩むほどの陽の光
母というもの
「シノちゃんただいまぁ〜っ!!」
「シナちゃんおかえりぃ〜vV」

満面の笑みで、きゃっなんて言いながら互いに飛びついて抱き合う二人。
親友との久しぶりの再開であるが、頬や額に互いに口付けるのは傍から見ているとただのバカップルにしか見えない。
彼女たちも若く見えているが、どちらもアカデミーに通う年頃の子供が居た。

るんるんと手を繋ぐと、スキップ交じりに歩き出す。
若々しいを通り越して、これでは少女二人にしか見えなくなってくる。
そんな二人が目指す場所、それは―――里の長、火影様の部屋だ。



『ほっかげっさまぁー!』

二人の大声と共に、吹き飛ばされた火影室の扉だったもの。
煙すら吹きながら、部屋の端であられもない姿となっている。

火影は体中から嫌な汗が噴出すのを感じながらも、それを彼女たちに悟られないように笑みを作る。
かわいらしい笑みを浮かべている二人の”少女”は、現在の里のトップ二人の母親。
つまり、里で最も”強い”者であると言える。
そんな少女たちは、にこにこと火影の前へと歩むと、笑顔そのままに額に青筋を浮かび上がらせた。
恐ろしいなんてものはとうに通り越している。
今すぐここから逃げ出したい。

「あのね、火影様」
「お願いがあるの」
「シカくんと」
「ナルちゃんに」
『1週間お休み下さいな☆』

二つの声重なるとき、里の壊滅へのカウントダウンが始まる。
これを断ろうものなら、彼女たちが暴走を始めるだろう。
そうすれば、まずナルトが面白がって率先して参加するだろうし、そうすればシカマルも参加決定。
クシナとナルトがやってしまえば、ミナトも巻き込まれることは必至。
最後は彼らの押し切りでシカク、果ては猪鹿蝶トリオ・・・
絶望的未来だ。

しかしここで了承すれば、彼らに回るはずの膨大な暗部でもハイランクな任務が他の暗部に裁かれる。
そしてそれを裁くのは自分になるだろうし、請け負った暗部も成功できるか危うい。
こっちの場合、被害は主に自分と暗部へと来るわけだが・・・
さて、どうしたものかと、火影は作り笑顔を絶やすことなく大急ぎで脳内会議を続けた。

だんっと二人の手が机に叩きつけられ、彼女たちが身を乗り出してくる。
それでも火影が渋っていれば、机の表面に立てられた指に力が込められ、机がギシだのビシだのと悲鳴を上げだす。
彼女たちの指型、手形がしかと机に刻まれて行く。
火影は慌てて声を出した。
この机は先日彼女たちの息子たちに破壊され、新調したばかり。
そうそう壊されてばかりいてはたまらない。

「わ、わかった!わかったからやめてくれぃ!」
『ありがとう、火影サマ♪』

彼女たちはにっこりと微笑むと、さっと机から手を引く。
やったわね、なんて互いにはしゃいぎながら帰って行った。
静けさを取り戻した火影室にすすり泣く老人の声がした、なんて怪談が生まれたのはまた後日のおはなしとして。

彼女たちはそろそろ終わるだろう、アカデミーへと向かっていた。
彼らに一刻でも早く会いたいし、待ってるなんて性に合わない。
彼女たちは繋いだ手をぶんぶんと振りながら、歌を口ずさんでいた。

「シカくんかわいいっ」
「ナルちゃんかわいぃい」

授業中だった教室に、生徒でも教師でもない声が急に響いた。
それと同時に、一番後ろの席に座っていた”噂の二人”に張り付いている二人の女性。
教室中がどよめいた。
あの二人は、互い以外が触れる事は嫌うし、それ以前に近寄りがたい。
そんな彼らにあんな事をしても攻撃されない彼らは誰!?
そんななか、チョウジといのだけはどこかわかったような瞳を向けていた。

「お母さん、シカ離して!」
「お袋、いつまでナルトにくっついてんだよ!」
「ナルちゃんのケチぃ〜」
「いいじゃないの」

ナルトがクシナを、シカマルがヨシノを、大好きな子から引き剥がす。
抱っこしてた子を取られた彼女たちはうなだれながら、ぷぅっと頬を膨らました。
シカマルはぎゅっとナルトを抱きしめながら、そんな彼女たちを威嚇するように睨む。

「あら!シカくんってば、どんどんかっこよくなってくわね!ナルちゃん、うらやましい!」
「シナちゃんってば!」
「あらあら?このクラスって、可愛い子が多いのね」
「ホント!あ、いのちゃんとチョウジくんも居る〜v」

彼女たちはさっさと機嫌を直すと、早速教室内を見渡す。
目ぼしい子供を見つけると、近づいて行って襲い掛かる。
子供たちはそんな彼女たちの行動に戸惑ったり、動揺したりとさまざまだ。
そんな二人を止められないかと見つめた先には、希望である彼女たちの子供。
けれどもう二人の世界にトリップしている。
彼女たち二人に両側から挟まれた一人の女子生徒が教師に助けを求めたところで、やっと我に帰った教師は慌てて彼女たちを止めに入った。

「あの、困ります!今授業中ですので……っ」
「シノちゃん、さっきチャイム鳴ったよね?」
「私たちが来た約137秒後に鳴ったよね、シナちゃん」

ねーっと顔を見合わせる二人に、生徒たちははっと時計を見やった。
確かに、既に就業時間は通り越している。
それどころか、この騒ぎを聞きつけて、授業が終わった他のクラスの生徒が廊下から覗きこんでいた。
ぽかんとしている教師から離れると、騒がしい生徒を通り越して、自分の世界に入っている二人の間に割り入った。

『それじゃ、帰りましょうかvV』

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