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欲したのは目が眩むほどの陽の光

「早く終わらないかな、アカデミー」
「んとに、めんどくせぇな・・・長すぎねぇか?」

はぁっと二つのため息が教室に響き渡った。



ここは明日の里を支える忍たちを育てるアカデミー。
その一室に彼らは居た。

彼らはすでに他の忍の追随を許さぬほどの高みへと上り詰めたのだが、年齢はまだたったの6歳。
他の子供たちと日々面白くおかしく、勉強しつつも遊ぶのが仕事のようなもの。
それがたとえ、暗部として他里の者を恐怖に貶めている人物だとしてもだ。
それを思って計らってくれたのは彼らとて理解しているし、わかっているからこそ毎日朝早くに起きて夕方までしっかりと通っている。
こんなにも緊急の任務を待った事はないだろう。

この退屈すぎる学校に通って、早くも半年が過ぎようとしていた。
あと数日もすれば、自分たちにとっては最初の卒業試験が執り行われる。
その試験に参加するには、特例を除いては5年はこの学校で学ぶ事が必須条件であった。
そして特例と呼ばれるものは、能力が秀でている事を教師が認め、他教師含む3人分の推薦状を得た場合だ。

彼らは遥かに能力が秀でているし、すぐに教師3人分の推薦など得られるものと高をくくっていた。
けれど、火影とてバカではない。
すでに手が打ってあったのだ。

どの教師もアクションを起こしてこないことにじれたナルトは、ある日教師を問い詰めた。
なぜ自分たちに推薦がないのかと。
あせった教師は、少しばかり”丁寧に”訊いたらあっさりともらしたのだ。

火影様の命で、あなたたちには最低5年間はアカデミーに通っていただかなければ、と。
もちろん、それに腹がたったのもあるが、忍として、あれしきのことで情報を漏らすのはいただけない。
腹いせを兼ねて、制裁を加えたのは言うまでもなかった。

そんな彼らがなぜ、ここまで面倒がりながらも真面目にアカデミーに通っているかと言えば、火影との約束もさることながら、とある女性が一番の理由を担っていた。

彼らはやっと終わったアカデミーに満面の笑みで伸びをすると、互いに楽しそうに他のものには聞こえない会話を始める。
まあ、たとえ聞こえていたとて、一般のアカデミー生であるものには到底理解できない内容ではあったが。
護衛なんて意味もないような、体だけの任務。
けれど彼らは忍で、それを全うするものだ。
護衛対象である子供たちが散り行くのを眺めると、そのまま瞬身で消え去った。

「ただいまー」
「おっじゃましまーす」

歴史を感じる立派な日本家屋に、二つの子供の声が響く。
一方は面倒くさそうに帰宅を知らせ、もう一方は若干楽しげに来訪を告げた。

その声に現れるのは、楽しげな女性だ。
彼女は料理中だったらしく、少しだけ塗れたおたまと、小皿を持ちながらパタパタと走ってくる。
彼女が彼らの前に立ち止まると、ふわりと良い香りが漂った。
どうやら、今日の晩御飯はまたも肉じゃがのようだ。
それというのも、彼女はナルトがここに来るようになって以来、にくじゃがばかり作るようになってしまったのだ。

「おかえりなさい。今日はいつもより早かったのねぇ」
「あいつらが屯せずに帰ったからな」
「おばさん、今日もにくじゃが?」
「ええ、なるちゃんの為に、おばさん今日も美味しく作ったからね!もう少しで出来るから、待っててね」

にっこりと告げられ、ナルトも笑顔でそれを了承した。
今日も、と彼女は自覚しているようだ。
互いに何日目だっけ、なんて何回目かも忘れてしまったやりとりをしながら、靴を脱いで家へと入って行った。

そのまま夕飯までと彼らはシカマルの部屋へと行き、いつものように暗部の仕事や任務の振り分けを行う。
仕事に追われてはいるが、互いだけの空間で、人の目を気にせずに居られるこの時間を二人は気に入っていた。
階下からは夕飯のいい香りが漂ってきて、この家全体の雰囲気も穏やかだ。
そして隣を見れば、最愛の人が微笑んで居る。
これ以上の幸せがあろうか。

「卒業、したら・・・」
「ん?」
「いや、なんでもない」

ナルトはつい、言葉に出していた。
ふっと顔を上げた彼にその続きは言いたくなくて、苦笑しながらごまかす。
シカマルとて、彼が言いたくないことを無理に訊き出したくはない。
そっかと互いに作業を再開した。

ナルトは思ったのだ。
もしも卒業したら、この暖かな空間からはじき出されてしまうのだろうかと。
そんな筈ない事くらい、ナルトとて百も承知の上だ。
けれど、ときどき不安になってしまう。

彼をこっちへと引き込んだのは自分。
いっつも自分が彼を巻き込んで、彼はいつもため息混じりにしょうがないって自分に従うのだ。
もしかしたら、嫌なのかも、と思うときがある。

「ナルト」

名を呼ばれて顔を上げれば、いつの間にか目の前まで移動してきていたらしいシカマルの顔が目に飛び込んできた。
途端に心臓がはねる。
吸い込まれてしまいそうなほどに澄んだ闇色の瞳に見つめられ、ナルトの頬は上気していった。

「結婚、しない・・・か?」

照れたように頬を掻きながら、苦笑交じりに告げられた言葉。
それはナルトの気分を浮上させるには十分すぎた。
それどころか、今なら天にも昇る気持ちというものががわかる。
きっと今なら空も飛べるとすら思えるほどの気持ち。
ナルトは驚きに見開いた瞳そのままに、即答していた。

「する!結婚、する!!」

それに驚いたのはシカマルも同じで、一瞬だけ動きを止めて息を詰める。
そこにナルトが飛びついて、互いを抱きしめあった。
この暖かさを、やっと手に入れる事が出来たのだ。
互いに抱き合いながら、どちらともわからぬ笑みが漏れる。

法律ではまだ出来ない。
同姓では結婚できないことも知っている。

けれど結婚とは、人や法から定められるものではないと二人は思っていた。
自分が相手を伴侶だと思えばそれでいいと。
戸籍上はいじれないとしても、自分たちの周りは恵まれていた。

ナルトの親も、泣きつつ文句を言いながらだろうと、きっと祝福をするだろう。
シカマルの親は、母はきっとナルトが子供となることを心底喜んでくれるだろう。
父とて、そんな年でかよなんてあきれはするだろうけれど、認めないはずがない。

互いのぬくもりを感じながら、その日はヨシノがいい加減に降りてきなさいと部屋にのり込んでくるまで、仕事も忘れて抱き合っていた。
ただ互いのぬくもりを感じ、幸せに浸っていたのだ。
ちなみに、ナルトの父ミナトにシカマルが襲われ、火影室及び里内施設のいくつかが破壊されたのはまた別の話。





  − − − − −
なぜ結婚orz
当初の予定としては、あそこではシカマルはやんわりとナルトの心境を察してるっぽく慰めるっぽいつうか、なんかそんな予定だったのに。

メインの二人があまりに淡白だからでしょうか…こんな影響が現れるとは(笑

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