欲したのは目が眩むほどの陽の光 親子喧嘩 「死ね、オヤジィ!!」 「ナルくん、ひどいなぁ」 素早く印を組めば、ナルトはすぐさま火遁を放ち、半径5kmほどを灰燼に帰す。 しょぼんと泣き真似をしつつそれを避けた“オヤジ”はケラケラと笑いながら、こちらもまた目にも止まらぬ速さで印を組み上げる。 パンッと手のひらを合わせれば水が集まり、それは三頭の龍と成りてナルトへと襲いかかった。 ナルトは龍へ向かって手裏剣を3本投げる。 「だめだよ、ナルくん。それじゃ受けきれない」 “オヤジ”からは水龍に隠れて見えては居なかったが、ナルトは印を組み上げていた。 クナイが水龍に触れる寸前でそれは地から吹き上がり、水龍を遮る。 それに気付いた“オヤジ”は少し慌てて、クナイを手に飛ばされた3本の手裏剣を叩き落とす。 しかしその視線の先にナルトは居らず、だんっと地面に叩きつけられた。 ナルトは自分の父親を組み敷き、片腕を背に締めながら首筋に忍刀を突き立てる。 「俺の勝ちだ」 「ナルくん強いなぁ」 「これであの件はナシだ」 「それは無理だよ」 しっかりはっきりと吐かれた否定の言葉に、ナルトの額に青筋が走った。 忍刀に力を込めて、首に押し当てる。 「ナルくん、痛いよー」 首からタラリと血が垂れ、刀を伝いて地に落ちた。 しかし余りにも場違いな腑抜けた声をあげられては、この攻め方は意味がないことを理解する。 知るかと吐き捨て、“オヤジ”から退き、刀の血を振り払う。 「埒が明かないな」 「だって、僕が決めたんじゃないもん」 「ハァッ!?」 ここにきての新事実の発覚に、ナルトは心底驚いた。 そうか、この馬鹿を隠れ蓑にしたタヌキに化かされたのかと。 よいしょなんて言いながら立ち上がった“オヤジ”は、体に付いた灰や土を払う。 握り拳を震わすナルトにごめんねぇなんてへらりと笑う。 先ずはこの馬鹿から叩きのめそうか、そう拳を振り翳した時だった。 「ナルト、待て」 「・・・シカマル」 ぎゅっと背後からナルトを抱きとめ、振り上げた拳を押さえ込む。 瞬間ナルトは頬を染め、どこか嬉しそうに彼の名を呼んだ。 そんな二人の様子を見て、“オヤジ”は笑顔ながらも怒りを露わにする。 自分の目の前で、花よ蝶よと愛で育てた可愛い可愛いナルトを抱きしめている男が居るのだから。 「今回の件は俺からも進言したんだ」 「シカマル、が……?」 どうしてと言外に告げる。 それもそのはず。 今回の件は、あの狸とこの馬鹿に騙されたと思っていたのだから。 大好きなこの人も関わっていようとは思いもしなかった。 「俺も一緒だ、ナルト。2人なら、平気だろ?」 途端、悲しげだった声音も少しばかり嬉しさを含む。 シカマルの腕の中でその体を反転させると、シカマルの胸に手を当てた。 とくんとくんと鼓動が聞こえる。 本物だと、本当だと、その証。 「わかった……シカマルが言うなら、我慢する」 「ああ……一緒に行こう、アカデミー」 ・ ・・ ・・・ そう、彼らが本気で術を出し合ったり、命を奪い合っていた理由は、ナルトがアカデミーに通いたくなかったからなのだ。 [*前へ][次へ#] [戻る] |