欲したのは目が眩むほどの陽の光
獣
ハラヘッタ・・・
腹が減ったぞぉぉぉ!
脳に直接聞こえてくる声は、ホラー映画のゾンビか何かのように酷く重低音に反響していた。
ザラザラと音をたてて、茶や赤の粒が転がり出ていく。
三食の粒を名前の彫られた皿にこんもりと盛りつけた。
傍らに置かれた容器にはドッグフードとかかれている。
「エサだぞー」
その言葉に待ってましたとばかりに犬小屋から飛び出した獣は、皿を持つ人間目掛けて飛びかかった。
その喉笛をいざ咬み千切らんと、涎を垂らしながら鋭い牙を剥き出しに襲いかかる。
しかし人間はそれより先に腕を動かすと、獣を横へと殴り飛ばした。
「甘えんぼさんだなぁ」
それでも諦めず襲い来る獣を、笑顔で沈める。
獣の動きがダメージで鈍り始めた頃、人間は自ら動いた。
てくてくと歩み寄ると、獣の前にしゃがみこむ。
その隙をついた獣は、無防備に差し出された脳髄目掛けて爪を振りかざす。
しかし敢えなく人間に踏みつぶされて、再び地面にめり込んだ。
獣がおとなしくなったのに満足したのか、人間はにっこりと笑って皿を差し出した。
「いっぱい食べておっきくなれよー」
「って、でかくなっちゃ困るだろ。九尾なんだから」
「平気だって。封印されてて、今じゃただの狐だもん」
声をかけて来た人を振り返ると、ふわりと微笑んで駆け寄る。
隣に腰を下ろし、彼を見つめながらぷらぷらと足を揺らした。
ただのねぇなんて、彼は狐を見やる。
″ただの″狐にしてはやけにデカいし、牙も爪も鋭すぎだ。
なにより、″ただの″狐は尻尾は一本だろう?
「それより餌やる度にあれじゃ、疲れないか?」
「んー?あれくらいじゃなんともないよ」
にっこり。
そりゃそうだ。
こいつはたかが獣一匹に惑わされるような奴じゃないのは、百も承知。
こっちを可愛らしく覗き込んでいるままに抱き寄せると、腕に抱き込んだ。
「心配なんだよ」
「シカ……っvV」
耳元で囁くと、腕の中で嬉しそうに顔を綻ばせた。
それどころか、だいすきっ!なんて首に抱きついてくる。
そのまま体を後ろに倒していくと、胸の上で楽しげに笑う声が聞こえた。
「ナぁルぅくぅん!?どーしてコイツがここに居るのかな!?何かな、その体制は!?離れなさぁぁぁいっ!!」
「親父ウザッ」
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