どうやら私は人の名前と顔を覚えるのが苦手らしい。 キーンコーンカーンコーン 「ふう…」 やっと苦痛で仕方ない太郎の授業が終わった。太郎がリコーダー吹き出した時にはクラス全員がどうしようかと思ったね。 「次はお昼の時間…あれ?」 ない、確かに今日入れたはずなのに。私の弁当がない。 「よっ、なまえ。一緒に飯食おうぜ!」 「有り得ない…」 「は?」 「弁当がないとか本気テンション下がるんですけど。この時間が学校生活で唯一楽しい時なのに。キャサリン、私を慰めて。」 「おっ、おい…お前大丈夫か?」 「…向日くんじゃないか。なんでここにいるの?」 「俺、お前とおんなじクラスなんだけど…」 「え?」 全然知らなかった。私、学校の友達ってキャサリン(薔薇園にいるピンクの薔薇のことよ)しかいないからクラスの人とかもわからないんだよね。 「ごめんって、向日くん。」 「…別にいいし、気にしてねぇよ。バカ!」 いやいや気にしてるでしょ。さっきからめっちゃ怒った顔で(可愛いだけなんだけど)睨んでくるよね。 「てかお前弁当どうすんの。」 「あっ、忘れてた…。今から購買行っても全部売り切れてるだろうし、どうしようかな。」 「…ん、」 なんだなんだ、おにぎりを見せびらかしてるのか。美味しそうだなぁ。 「一個やるよ、おにぎり。」 「えっ、いいよ。向日君が食べなよ。部活あるんだし。」 「いいから人の好意は受け取っとけよな。」 「ありがとう。」 向日くんから貰ったおにぎりを食べてみるとそれはもの凄く美味しかった。 「向日くん、このおにぎり美味しいね。」 「だろ!俺の好きなからあげと納豆が入ってるんだぜ。」 「へぇ、私も今度作ってみよう。」 「なまえってさ、弁当自分で作ってきてるわけ?」 「うん。」 みょうじ家には自分でやれる事は自分でやりなさいというちょっと古風な風習があるからね。ただ単にお母さんがめんどくさいだけなんだけど。 「なぁ、じゃあさ今度でいいから俺の弁当も作ってきてくんね?」 お前の弁当食べてみたいと無邪気に笑う向日くんに拒否出来る人なんていないと思う。ジローくんといい向日くんといいどうしてこうも可愛いのか。女の私は大分負けてる気がする。 「いいよ。」 「よっしゃ、あとさお前のその向日くんてのやめろよな。なんか他人行儀な気がして嫌だし。岳人って呼んでみそ。」 「ははっ、わかった。じゃあがっくんだね。」 「がっくんて…まぁいいけどさ。」 キャサリンしか友達がいなくて、お昼なんていつも一人で食べてたけどがっくんと食べたお昼はとても楽しかった。お弁当は豪勢に作ってあげよう。 昼休み (友達がまた一人出来た) ←→ [戻る] |