君と、まーくん
「好き、大好きじゃ。」
屋上でまーくんに言われた言葉が何回も何回も頭の中でリピートする。まるで壊れたMDプレイヤーのように器用にそこだけを再生するのだ。純粋に嬉しかった、私はまーくんが好きだし一緒に居てとても楽しい。けれど私は、私の好きっていう気持ちが恋としてか友達としかがわからない。
「ちゅう、された…」
そうだ、忘れかけていたけれどまーくんにちゅうもされた。突然のことで頭が真っ白になって今となってはあんまり覚えてないけれど、やたら心臓が苦しかったのを覚えてる。ドキドキ、ドキドキと、壊れるくらいに鳴っていた。しばらくぼーっとそのことを考えていると後ろから背中をつつかれた。
「なまえちゃん、今日は部活がないんじゃ。一緒に寄り道して帰らん?」
まーくんはあの日からもずっと普通で、そのことが余計私を判らなくさせていた。いつものように話して、笑って、今だって一緒にご飯を食べて。でも私に抱きつかなくなった。たまに見せる悲しげな笑顔も私がさせているんだなって思うと胸が痛い。
「なまえちゃん?…いや?」
「え?あっ!寄り道でしょ、もちろんいいよ。どこ寄って帰ろうかなぁ。」
「行きたい所があるんじゃが…」
「うん、わかった。」
私が承諾すると、まーくんは少しほっとしたような仕草をして悲しそうに笑いながら私の頭を撫でた。それがとても優しくて気持ちよくて、最近寝不足だった私を夢の世界に連れていくには充分すぎるものだった。
「なまえちゃん…」
3時間くらい寝てしまったのか、起きてみると空が夕焼けに染まっていた。横にはまーくんのほっとした笑顔。帰ろうと優しく手をひく彼はずっと私を待ってくれてたのだろう、もう教室に残っている生徒は私達だけだった。
「ごめんねまーくん、待たせちゃって。」
「大丈夫、俺もなまえちゃんが起きる少し前まで寝とったから。」
「ふふっ、授業は聞かなきゃだめだよ。」
「なまえちゃんだって寝てたナリ。」
「うっ、まぁそうだけど…」
いつも通りとはいかないけど和やかな雰囲気が流れる。自分でもわからないほど穏やかな気持ちでさっきまでテンパってたのが嘘みたい。
「なまえちゃんここ。」
「うわぁ…」
まーくんが連れてきてくれた場所は小さな公園のちょっと奥、小高い丘になっている場所だった。
「綺麗な夕日だね。」
「俺の秘密の場所ナリ。星も綺麗やし、寝るのにも良いんじゃ。」
「ふふっ、確かに気持ちよさそう。でもいいの?私に教えて。」
「うん、良いんじゃ。なまえちゃんに知って欲しかったから。」
まーくんは自分の手で私の手を優しく包み込んで小さく息を吸った。
「なまえちゃん、これで最後にするから。俺、諦めるから言わせてくんしゃい。」
その後の言葉はまーくんが言わなくてもわかった。私は、諦めると言われたことが悲しいと思っている自分に驚いた。
「好きだよ。」
その言葉は意外にもすんなり出てきていた。もしかしたら私は難しく考えすぎていたのかもしれない。答えは簡単で最初から私の中で出ていたのに。
「なまえちゃん好きって…」
「うん、私ねまーくんとおんなじようにまーくんが好きみたい。」
「っ…」
生まれて初めてした告白は恥ずかしくて嬉しくて少し寂しい、そんな感じ。まーくんから受ける何回目かもわからない抱擁が今日はなんだか特別に思うのは私達が恋人同士になったからなのかな。
「なまえちゃん好いとお、いつまでも一緒じゃ。」
「ふふっ、そうだといいなぁ。」
まーくんと友達になって、遊んで、喧嘩して、仲直りして、告白して。この短い間に色んなことがあった。沢山の友達も出来た。そうやって変化していく日常を出来ることならまーくんと共に、これからも過ごしていきたい。
君と、まーくん
(明日からはきっと違った世界)
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