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序章



荒い息遣いが静寂を破り続けていた。呆然と立ち尽くし地に転がるそれらを見て、ただ。


「違う…私は…」


呟く言葉は刹那に吸収される。小さな少女は足元の母親を見下ろした。どうして母が此処にいるのだろう?つい先ほど村人に捕らわれた父はどこにいるのだろう?視線の先には、その名も肯定し難い小さな墓。


「私は…」


振り返った目の前に広がる光景が少女に戦慄を与える。そしてそれをつくり出したのは、彼女の右手に握られた紅黒いナイフだった。


『母親の前で、母親と同じようにお前を殺してやる』


そんな言葉に抗い、一方的な村人達から少女は自らの命を守っただけ。


「私は魔女なんかじゃない…」


パチパチと、ささやかな拍手は炎が有機物を焼く音。それに混じるのは、聞き慣れた父のオルゴール。地に転がった人形も少女の服も、気が付けば西の空と同じ色をしていた。

そして彼女は…。



Spieldose



奏でる旋律が齎すのは楽園か。それとも奈落か。
必然が装う偶然の中、ひとつの世界でそれは徐に始まる。

To Be Continued...





あきゅろす。
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