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「―――――躾が行き届いてるな」



皮肉な言い回しに要はゆっくりと振り返った。




――――今や部屋には危険の香りが満ちていた。





男が笑う。


酷薄に。


残酷に。


狡猾に。





「・・・・・正直、あんたの返答なんざ、どうでもいい。あんたが嫌がろうがなんだろうがな」




「―――ただ、そのお綺麗な氷の仮面をぶち壊して、泣いて縋るあんたを想像すると卑猥でゾクゾクするのさ。あんたのその冷たい体にむさぼりついて、骨まで食らったら、こんな俺でも生きる意味なんてもんを見つけられるかもしれねぇな」




――――――正直だな。


要は近づいてくる恐怖の塊を凝視した。





「――――本能に忠実という訳か・・」



「あんたは理性に忠実だ。これでイーブンだろ?」





伸ばされる手に要は覚悟を決めて男を見やった。
とてつもなく危険で、だがそれゆえ興味深い男を。







―――――昇るも一興、堕ちるも一興。





「―――――いいだろう」


冷酷でいて、ひどく魅惑的に要は微笑んだ。冷めた目が危険な香りを切り裂く。




「―――ただし、私がただ飯食わせるほど甘いとは思わないことだな」





End.

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あきゅろす。
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