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< 芽 >




―――沈黙の重いリビングは、今や息をするのも苦しい。


長年連れ添った友の本性は最低にして最悪であったが、それはそれで悪くない。

恭平は、久居要という可愛そうな相手に興味を駆り立てられるのを感じながら、沈黙を破った。


「――――おまえは久居要が欲しいっと・・・で、どうする訳?おまえにとっちゃ、どうでもいいだろうが、夜に棲む俺たちには昼のベールは厚いのさ。体の関係があったとしても、周囲はそれを許さないってね・・・・・何しろ、俺には久居要がおいそれとおまえに堕ちるとは思えないし?」


恭平は他の3人をちらりと伺い見ると、どうやらやはり類友らしい。

3人の表情は心中するのも悪くないとそう語っていた。早速、昼にもっとも近い存在である祐一が口を挟む。


「・・・・天下の久居だからねぇ・・・・・ま、でも向こうにその覚悟があれば、昼と夜の癒着も簡単さ。何しろ轟本人はともかく、緋来の力を欲しくない奴はこの世にはいないでしょ?少なくとも向上心のある奴はね・・・。幸い、久居要は跡目相続争いに巻き込まれているし、彼自身、夜の世界に精通してる。久居要は危険を侵して簡単に堕ちるほど馬鹿じゃない・・・・けど、だからこそ緋来の力を拒絶することもできないはずだよ・・・」


「なら簡単だ」っと庄治が笑う。

昼の連中を毛嫌いする庄治だが、恭平同様、久居要に興味を持ったらしい。どこかに乗り込んでいくようなわくわくする表情で、彼は言った。


「―――こいつは久居要自身が欲しい。久居要はこいつの権力が欲しい。取り引き成立だぜ・・・・もっとも、やっこさんがこんな物騒な怪物に食われてまで権力が欲しいかどうかはし知らねぇがな・・・」


口数の少ない竜也までもが、すっと笑った。

「――――轟が相手に拒絶を許す玉でもあるまい」


「・・・・そりゃそうだ」と4人は笑いあった。恭平は、他人事のようにもう本性を隠してしまった男を見て思う。



人に踊らされることをもっとも嫌う男が、自ら久居要の飼い犬になる。



―――それはつまり、轟に惹かれて集まる者たちが全て、久居要の飼い犬になると言うことだ。






――――果たして、久居要という男はそれに足る価値があるのだろうか。


恭平は他の3人も抱えているだろう不安の芽を感じながら、写真に映っていた男に思いをはせた。





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