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< 悪友 >


都心の一角とは思えない広さを保持したリビングルームには、すでに4人の男が顔を揃えていた。

どの男もまだ若く二十代前半から後半と言ったところである。まず真っ先にこちらを向いたのはホスト風のいでたちの陽気な男だった。彼は、リビングルームのど真中を円を描いて占領する黒い革張りソファに、足を組んで座っていた。



「――――よぅ、轟」

片手を挙げて挨拶する仕草がよく似合う色男である。

部屋の主が返事代わりに投げつけた黒いメットを、なんなく受けとめる。

―――名を新橋恭平(しんばしきょうへい)。

男―――緋来轟(ひらいごう)ともっとも付き合いの長い友である。


恭平は冷徹な男を揶揄して、したり顔で笑った。



「ご主人様にいたっては、本日もご機嫌麗しく・・・・」



「―――ぶっ!そりゃぁ、いい!」

途端、恭平同様にソファを陣取っていた男が低い声で笑うのだ。3,4人分の空間に、長身でガタイの良い体を横たえて自慢のスキンヘッドに両手を預けたその男の名を、吾妻庄治(あずましょうじ)と言った。

庄治は見た目の通り、血の気が多く常にギラギラと血に飢えた目をしているような男だった。

―――“力は力をもって制す”、そう言わんばかりの無謀なこの男を轟は嫌いではない。


轟は未だに笑っている庄治に不快そうに鼻を鳴らすと、テーブルを囲んだソファ中央、恭平の前にドカッと足を投げ出して座った。


「・・・・まぁ、轟が不機嫌なのはいつものことだけれどね」


―――自慢のナイチンゲールのような声が部屋に響く。

先ほどまで窓際に立って街の景観を見ていた篠崎祐一(しのざきゆういち)がゆっくりとやって来て、轟の横、ソファの背に腰を落ち着ける。

彼の人形のような顔は未だ窓を向いていたが、その視線は窓を通して何かを見つめているようだった。



「―――然り」

抑揚のない声で、頷くのは柳竜也(やなぎたつや)である。短く借り上げられた髪は、彼の誠実さや潔癖さを如実に表し、能面のように表情のない顔は、口の重い彼の性格をも現している。

庄治の隣で彼だけが、毅然と背筋を正し、堅苦しい姿勢を保ったままである。

轟は2人を一睨みした後、ふぅーっと煙を吐き出した。



悪友たちが何をしに来たのか十分承知していた。
だが―――。





――――聞かれもしないのに答える義務はない。

何やら思惑ありげな4人を尻目に、轟は短くなった煙草を灰皿で押しつぶす。一筋の紫煙が、部屋に昇った。




「―――それじゃ、まあ、本題といこうか」

ひょいっと眉を挙げた恭平が数枚の書類を脇から取り出し、乱雑な仕草でテーブルに投げ出す。

バサッっという音とともに放り出された書類から、勢いの止まらない写真が1枚だけ飛び出した。



――――す――っと足元に落ちて来た“ソレ”を、轟は冷たく一瞥した。



新しい煙草を口に銜え、火をつける。じりっと火の付いた煙草を深く吸い込むと、苦い煙草の味が口腔に広がった。ふぅーっと紫煙を吐き出すと。




――――もう先ほどの和やかなムードは消え失せていた。



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