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< 王の思惑 >
さながら『モーセの十戒』
生徒の波が真っ二つに分かれ、現れた男を卓は見つめた。
制服を着崩し、黒い髪を撫でつけて。
その怜悧な美貌には冷笑が浮かんでいる。
まるで肉食獣がいたぶって遊ぶための獲物を見つけるように。
ゆっくりゆっくりと。
けだるそうに現れた。
その猛禽類ような視線の先にいるのは。
――件の転校生だ。
そして、学園の王はのたまった。
「―――おい、オマエ。・・・名前は?」
静まり返っていた食堂が一瞬でざわついた。
それに乗じて、卓はゆっくりと男の射程範囲から逃れようとするかのように転校生から遠ざかった。
性欲にしか執着しない冷酷な王。
紺野真彦が『気にいった』とはいえ、小市民のガキ一人に今更何の興味があるというのか。
―――否、何の思惑があるというのか。
卓は眉をひそめる。
誰の思惑だろうが誰の執着だろうが、力でもって平気でそれ踏みつけていく。それが冷酷無慈悲な学園の王。
その王が動いた。
何を考えてんのさ。
――なぁ?王様よ。
しかし、問うたその答えを卓は知りたくはない。
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