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< 籠の鳥 >







――――カタカタ。


カタカタカタ。






突然、震えだしたカウンター上の携帯電話。




――――着信名に自然、眉が寄る。





どうやら今夜はこれで終わりとはいかないようだ。





「―――――たった一夜の自由すら許されず、か」


鼻で小さく笑うと懐からシガレットケースを取り出す。優雅な仕草でタバコに火をつけても電話の相手はまだ諦めなかった。


カウンター越しにマスターと目があった要は苦笑して通話ボタンを押す。






「――――――私だ」





『要様、どこにおられるのですか。突然、いなくなられては困ります。それも護衛を撒いていなくなるなど――』




電話の相手の剣幕に要は小さくため息をついた。



主人の突然の反旗は、部下にはとんだ災難といったところだろう。だが、普段、理性で動く要もロボットではない。時には感情というものに素直に従いたいときもある。




「――――私の記憶が正しければ、今日の仕事は終わったと思ったが、違うか?」





『はい、それはその通りにございます』




「―――ならば、プライベートを邪魔される覚えはないな」




『要様!要さ・・よう―――』




――――仕事に忠実な部下が何やら言っているようだったが、生憎、今夜は付き合う気力も体力もない。要は容赦なく電話を切り、そのまま電源を落とした。




自然、ため息が零れ落ちる。




――――自分で選んだ道とはいえ籠の鳥にも休憩は必要だ。


囀り過ぎては声も出ず、さらには効果も半減するというものなのだ。



――――とはいえ、神田がこのまま引き下がるはずもないだろうが・・・。



終わりの短い自由を覚悟して要はグラスを煽る。まだ十代の頃、愛酒としていたスティンガーはその名の通り外見に見合わず強く要の喉を焼いた。



―――疲れた時、一緒に楽しめる仲間など彼には1人もいない。



愚痴も弱音も酒と一緒に飲み干して、目が覚めると最善の対策を考える。そうして、久居要は成り立っている。今更、それを寂しいと感じたことはない。




しかし・・・・



要の脳裏を先ほどの若者たちが過ぎった。







―――あんな仲間も良いのかもしれない。







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