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< 波音が聞こえるよ 6 >










―――――ビールの空き缶が卓袱台を占領し始め、耳に届く蝉の声も遠くなり始めた頃、先ほど逸れたと思われた猥談に再び花が咲く。





中高生ではないにしろ、この世代の健康優良児が集まれば当然の結果だ。



顔見知りや初対面の男同士の場合、共通の話題などそれしかないと言っていい。










「つーか、いつみてもでっかいよな、秋ちゃんのフランクフルト」









―――――酒好きが酒に強いとは限らない。







酷い例えをさも楽しそうに続ける幸一のその瞼の下がり具合を一瞥して、そろそろ友人の記憶が消え始める頃と検討をつける。


ぐっと空き缶を潰して畳に放ったその喬の思考を意外性で持って打ち止めたのはノンアルコール片手に姿勢を変えることのない男だった。









「――――まぁ、ポークビッツに比べればな」







サーフィンへかける情熱か、それとも好青年の面のせいか、見た目の爽やかなイメージだけが明らかに先行する男に密かに目を見張る。


性に関しては純情、つまり猥談を嫌がるナイーブな人種なのでないかという喬の危惧はあっさり杞憂に終わったからだ。


もっとも、女子がいなければ大半の男は下ネタを喜びはすれ嫌がることはないし、特に男の友人の多い人種はその手の話には慣れていることが多い。







――――爽やかなイケメンが口の端を持ち上げたところで、その好感度が倍増するだけなのかと喬はその時悟ったのだ。



だが、どんな顔を持とうとも、男はやはり男に違いない。











「・・・・俺のは列記としたバイ●ルン。形の美しさがわからんかっ!」







Tシャツ短パンでビール片手に仁王立ちしても、その馬鹿さ加減が変化するわけではない。








―――――プシュッ。







畳に佇む幸一を手を振って往なすと、残った手の指で新しいビールのプルトップを開けた喬は蔑むような嫌な笑みを向けた。










「―――競うな。競うな。下々の者。余はシャウ●ッセンっぞ」








―――――下ネタを嫌う女子が多いことは事実だが、男から言わせれば、会話の中で真っ先に下ネタを言い出す者は『気遣い上手のムードメーカー』にも当たるのだ。







現状の幸一のように単なる好奇心や無意識から口にする者もいれば、飲み会などで意識的に口にするものもいる。



それは女子にとっては酷い災難だが、話の進まない男子にはとっては救いの手だ。



女癖の悪い男が、たいてい男にとって『良い奴』である定説は『男よりの視点』が強いからだった。



逆に男受けしないさばさばした女子が、『女子視点』に強いとも言える。



一口には言えないが、協調性を重んじる女子は自分以上に女らしい女子を敬遠するように大抵の男の目には映るし、自ずからその枠を跳び出ていく男勝りの女というのはその事実を正確に把握しているようにすら思える。



それは少なからず、男よりも『女よりの視線』を意識している結果ではないか。








――――ボーイッシュな女子ほど意外と女らしい。



そのもう1つの定説は様々な女と遊び歩いた年上の男たちからよく語られるものだった。










「―――――死んでしまえ、喬っ!!!」





腰に飛び込んでくる幸一を軽く横に往なして目ざとくその手からビールを取り上げる。


そのまま口を開けたばかりのビールを諦めた喬は「百年早ぇわ」と鼻を鳴らして四の地固めに持ち込んだ。


ぎゃーっと悲鳴を上げ、すぐに力尽きた酔っ払いが「くそ〜」と声を上げる頃には部屋は3人の男の馬鹿笑いに包まれていた。







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あきゅろす。
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