Main < 厄介者 > 「―――そいつがおまえの玩具か、紺野?」 静まりかえった食堂に、その低い男らしい声が響いた時。紺野真彦(こんのまさひこ)は、目の前のホスト以外にもう一人。この学園には厄介な相手がいることを思い出した。 ――この学園の絶対君主。 冷酷で残忍で、獰猛な美しい男。生徒会長の真田晃平(さなだこうへい)だ。 何を考えているのかその鋭利な美貌からは読み取れず、ただただ周りに威圧感を与える男。タメを張れる根性も頭脳もない者は、自分の力量の無さに近くによることも叶わない。 「――――ちっ」 舌打ちしそうになった真彦は、しかし誰かに先を越されて思わず視線をそちらに向けた。 常に甘いマスクでニヤリと笑う食えないホスト男が、転校生に回した腕を解き、無表情に生徒会長を見ていた。ふと視線が絡むと、神埼卓は首を傾げて笑った。 「・・・王様のお出ましってね?」 その目が愉快そうに細められた。 ――――どう動く? そう問う視線に見透かされていることを知る。 だが、そんなことは彼にはどうでもよかった。 真彦は笑う会計に冷たい視線を返した。 ――喉から手が出るほど欲しいモノがある。 それさえ手に入るのなら、この茶番劇を演じる価値は多いにあるのだから。 [*前へ][次へ#] [戻る] |