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< 参戦 >
―――ウケる。
卓はもじゃ頭の青年を鼻で笑った。腹黒副会長もとい紺野真彦の茶番劇もさることながら、このもじゃ頭は何だと。
『事実は小説より奇なり』
この御時世にその格好。シナリオをそのまま現実にしたのなら、それはコスプレとしか言いようがない。
コスプレした男が席に座って、オムライスを食べている。
腹がよじれてしかたない。
―――ああ、ウケる。
「へぇ〜、これが紺野のお気に入り、か・・・」
もじゃ頭を何の気なしに撫でて見るとぱさついた固い髪の感触が手に伝わる。その瞬間、転校生の左右にいた1年でも有名な不良とテニス部の王子様として名高い爽やか青年が、ぎょっと目を見開いた。
「あ?!おまえ、誰だ!?」
もじゃ頭が頭に載せられた手を叩き落とす。周辺のざわめきが増し、転校生の前の席に座っていた平凡が真っ青に震えていた。
「これって失礼なことを言うなよ!俺には金山雄大(かなやまゆうだい)って立派な名前があるんだからな!」
甲高い声で怒りを露わにした青年を卓は悪い悪いと軽くあやしてウィンクする。
「俺、神埼卓(かんざきすぐる)。スグルちゃんvって呼んでよ?」
「―――神埼。雄大は私のお気に入りだと言ったはずですが?」
叱責するような声が飛ぶ。見ると王子様が咎めるように目を細めていた。卓は転校生の肩に腕を回し、ニヤリと微笑む。
「だって、俺も気に入っちゃったし〜。なぁ?宗助?」
ちらりと横に立つ悪友を顎でしゃくる。寡黙な男前は一瞬眉を潜めると、わからないぐらいの小さな溜息を残して転校生に近づいた。
転校生は驚きのまなざしで背の高い男前を見上げる。
「・・・・紙屋宗助(かみやそうすけ)。よろしく」
卓の視線の先では、腹黒王子が一瞬悔しそうに唇を噛んでいた。
ああ。
もう飽き飽きしてるのさ。
変わらない毎日などくだらない。
頭が腐ってもげちまう。
―――だから、面白いことは皆で楽しむべきだろ?
ハジめたアンタ。
ノッたオレ。
そしてノらざるを得なかったコイツでさ。
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