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< The cigarettes >
「――――賭けをしようか?」
男はその誠実そうな顔に残酷な笑みを浮かべて囁いた。相手の男―――氷川 亨も唇の端をゆっくりともち上げた。
「―――俺の知る限り、おまえの思いつくのは悪趣味なもんが多すぎるぜ」
氷川の銜えたタバコがジリジリと音を出して燃え、煙がゆっくりと上へ昇ってゆく。彼の親友はいつだって、そのお綺麗な顔で一体何を考えているのかわからない曲者なのである。
「・・・・・その割にいつも楽しんでいるように見えるが?」
鼻を鳴らした氷川を無視して、優雅にコーヒーを傾けて男は静かに口を開く。
「それを差し引いたとしても、だ。」
「・・・・生徒会の仕事を一手に引き受けている私に、少しはねぎらいがあってもいいだろう?」
聞き捨てならねぇと吐き捨てて、氷川はずる賢い悪友をじろりと睨みつけた。
「―――『君は何もしなくてもいい』、そう言ったのはてめぇだろ?」
表に立つよりは裏で画策するタイプなのだと、煩わしい氷川家の監視をどうにかするという条件で彼はまんまとこの椅子に座らされることになったのである。もっともそれを後悔したことはない。自由が手に入るなら安いものだ。
氷川は短くなったタバコを飲みかけの缶コーヒーに投げ込んだ。
―――ジュッという小さな音が響く。
「・・・・・で、何?」
そうして食いついた魚に、宮島はニヤリと笑うのである。もちろん、自分同様に親友も悪趣味なのをよく知っていたからである。
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