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< Versus >










「――――はっ、また煙草か」







―――――食堂の席をそれとなく立った椎名イサオにかけられた低い声の持ち主は目下『お付き合い中』のその相手だ。


しかし、顔にもう一つの視線を感じるということは同じ言葉を言いたいのは一人ではないということだろう。










「愛の補給のお時間ですから・・・何、ダーリンは俺の愛、補給してほしいわけ?」








ヘラっと笑ったその顔に、しかし、その声の持ち主の視線は向いてはいない。


ただ興味ないとでも言うように鳴らされた鼻に小さく肩を竦めイサオは視線の先にいる愛され平凡の隣に座るご主人様を見やった。










「―――――では、イサオ君はこれにて失礼」




小さなウィンク一つを呆れ顔の生徒会長に送り、アーモンドの色の髪が揺れる。


しかし、咄嗟に伸びたその手が去ろうとする腕を強引に掴んだためにその体は食卓から逃れることはできなかった。











「―――――少しは控えろ」



アーモンド色の瞳が視線を向けもしない冷たい男の横顔を捉えていた。


しかし、低い声を発したその男は何も語りはしないのだ。










「―――――俺から愛を奪うの、ダーリン」



はっと小さく鼻を鳴らしたイサオはその腕をゆっくりと振り払う。









「食後の一服ってのは喫煙者にとって最大の至福なわけ。いくらダーリンでも、こればっかりはイサオ君も譲れないから」



そうして、こちらに視線も向けない男にイサオは目を細めて笑うのだ。











「――――――大丈夫。寂しくないよ。だって、イサオ君はダーリンに首ったけだから」





そっとクリーム色の髪に触れてことさら優しく撫でてみせる。


途端、食堂の歓声とともに男の怒りの目がようやくイサオに振り向いていた。








「・・・・貴様っ・・・」







『キャ――――――!!』


『やっぱりイサオ様が攻めなんだ!!』









「――――ま、ざまぁ?」





―――――ヘラリと笑うV系バンドマンは素敵な魔法を使う嘘つき妖精なのだ。





End.

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