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< セクシーマン >













『おい、アイツらだぜ』


『ヤベ、オマエ、目合わせるなよ』










ドドドドドドド、ドドドドドドド。








――――心の臓を鷲掴みにするその低音が静かな都心に大きく響き渡れば、地の底からこんばんはと悪魔が手を挙げて挨拶してるって事実にぬるま湯に浸かりきった甘ちゃんたちでも気づかざるを得ないってわけだ。


水面下の事情にしか興味のない世間様も寒気がしていっそ鳥肌ものの『正義』って甘さと性根まで腐りそうな臭い『道徳』って綺麗事だけがこの世を支配してるわけじゃねぇって現実をようやくその地獄からの爆音に認める気にもなるんだろうよ。








ドドドドドドド、ドドドドドドド。








黒い排気ガス撒き散らして数十台の大型バイクが群がって走るその様子は、ただ事じゃ済まされない恐ろしさだからな。


それも一様に黒い革着こんでまるでゆらりゆらりと徘徊する肉食の獣のようにゆっくりと押し寄せるってわけだから、まぁ、後退りする通行人には自分が獲物と思えても仕方はねぇのさ。










はっ、尻持ちだ?









大層な乗り物にのりつけて世間様に格好つけよう悪ぶろうなんてちんけなことを考えるどこぞの不良とは所詮器が違うってところだけは誤解のないようにお願いしたいね。


生憎、鋭く風を切るその瞬間に魅せられてアクセル吹かしてあの世目指すほど孤独でもなければ、飛び跳ねるスリルに快感を得る酔狂なタイプでもない。


まして世間様を騒がしてポリスと追いかけっこをするほど他人に興味も関心もないってわけだ。


だから、どっしりと無機質な乗り物に腰据えて跨って精々冷たい世間様の目って奴をまっすぐ見返して、その境界線の存在をきっちりわからせてやるってのが俺たちの流儀なのさ。










ドドドドドドド、ドドドドドドド。







なぁ、徳性を害するものを不良だとそう言うが、もともとそのサガをもって生まれた奴らにとっちゃそれが所謂『普通』って奴なわけで。


それを数の多さで持って一方的に良からずのレッテル貼り付けるとは結局世間様のやることは悪を地で行く俺たち以上の残酷さとえげつなさを秘めているってことなんだろうぜ。


もっとも『普通』って定義すら、数の多さを理由にした体の良い矛盾の塊ってわけだから、結局この論議を始めちゃキリがない。




だったら、議論するだけ無駄ってわけだ。


所詮、いくら生唾飛ばして吠えようがマイノリティの心労なんてメジャーなその地位を確保したそいつらにわかるわけはないからな。








ま、何はともあれ、路頭組むように集まった悪魔のガキどもは、冷たい世間様に欲求不満からひと泡吹かせようってわけでも、お堅い『正義』って代物に喧嘩売ろうってわけでもない。


まして臭い言葉のオンバレ―ドの『道徳』を今更根底から覆そうなんてこれっぽっちも思っちゃいないのさ。


だから、不良だ悪だと騒ぎたいなら、まぁ、勝手に騒いでくれってのが正直な本音で、そこに不良特有の仁義だ正義だと義賊も真っ青な振舞いをするつもりはさらさらないね。








『甲斐さん、ハンドル変えました?』



『いや、何すか、その笑顔。嫌な予感が・・・ギャー!頬撫でないでください。俺の桃頬』



『頬に桃はつかねぇよ。・・・で、甲斐、今日はどこまで転がすよ?』






ま、結局のところ、マイノリティに言わせれば『世間様?で、それが?』ってのが関の山なのさ。




ヒールを前にビビる奴は勝手にビビって尻まくってりゃ、それでいい。



生憎とビビりなチキンハートに用はない。












―――――なぁ、そうだろ、陣?







俺たちは俺たちのやりたいようにやる。





ただそれだけなのさ。





End.

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