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< 偽りの恋人 >
「―――――園部、これを馬場先生のところまで持って行ってくれ」
教師というものは必ず『優等生』を重宝する。
成績優秀、品行方正な模範的生徒だからこそ、間違ってもその手を噛むことはないとそう考えているのだろう。
しかし、どんなに在学中に重宝しようと『優等生』など卒業してしまえば記憶の隅にも止まらないそんな存在に違いない。
―――――そして、そんな現実こそ園部雪夜には好ましい。
「わかりました。馬場先生ですね」
プリント用紙の束を抱え、雪夜は優等生の微笑みを称えて見せた。
その表情に満足気に頷いた教師は、しかし、次の瞬間宜しくと上げかけたその手を止めるのだ。
「・・・・園部、やはり自分で持っていく」
慌てたようにプリント用紙を持ち去るその背中に雪夜はすっと目を細めた。
――――そして廊下に出来た影に視線を向ける。
「――――また・・・・」
呆れたようなその溜息は簡単に無視された。
ただ背中から回される強引な腕が従えとそう無言で告げるのだ。
もはや腐った天才に学校という小さな社会は防御壁にもなりはしなかった。
「――――Correcto,帰るよ、俺の性悪なお姫様」
――――だが、結局そこがどんな場所であろうとふざけたその軽い言葉に園部雪夜は逆らえないことを知っている。
End.
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