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< 恋道8 -戻れない恋- >








「―――――どうだ?」



「馬鹿か、全然だろっ・・・っ」







――――舌を絡めて互いの技巧を争った。


その時はまだ『馬鹿をしている』その自覚がお互いにあったのだ。


理性はまだ若さの流れに辛うじて耐えていたのかもしれない。








「・・・・ぁっ」




――――互い無言になったのは擦り合って息があがり始めたその頃だった。



それまではお互いどうだとばかりに張り合いを続けていたというのに口を閉ざしてからは部屋に漂うその空気が何か違うものに変わっていた。








―――――きっかけはどちらがうまいか。




思春期の男なら誰だって争うネタだった。


ネタに出来ない境界線を越えるつもりは無論、2人にはなかったのだ。









「・・・・オマエっ・・・」




切羽詰まった男の声が耳元に届くが、同じように切羽詰まった自分の乱れた呼吸に野志輝明(のしてるあき)は嫌でも気がついた。


垂れる男の汗を頬に感じるが、それ以上に体に感じる他人の齎す痺れに頭がどうにかなりそうだった。


思わず縋るように目を向けてしまった輝明はそんな自分を恥じてさっと視線を逸らす。








「・・・・いっあっあっ!!」






――――瞬間、爪をそこに立てられて輝明は体を仰け反らせ放った。


思わず自分のものを掴んでいた男の手を叩き落としていたが、本人はその行動すら気付かなかった。









「・・・・はぁ・・・はぁ・・わりっ・・」




―――ただ見つめられるその視線に耐えかねて思わず床に言葉を零す。


負けたのだと理性でわかっていたが、今はからかわれるだろう未来よりもその場に漂う妙な雰囲気と自分だけ醜態をさらしたその羞恥心が先だった。


これでも女を泣かせてきた経験のある輝明が声を出してイクなど人生の汚点に違いなかった。







―――――爽やかなハンサムと称される野志輝明と猫のような掴めなさを持つきれいめ系の友人がツルんでいるのは校内でも有名な話で、どちらがモテるかなどと噂されてはいたものの今まで本人たちは至って普通に友人同士だったのだ。


しかし、たまたま寮の部屋でオールでゲームしようなどと盛り上がり、変な方向に話が向いた時には互いよくわからない好奇心で胸がいっぱいだった。







『・・・・じゃ、いっちょ勝負してみようぜ』




『マジかよ。負けて泣くなよ?オマエ』




『――――言ってろ。勝つのは俺だ』









――――馬鹿だった。






今更ながらに輝明は男の猛ったものから視線を外しながらそう思った。



もはや友人の目を見る気にはなれない。









「・・・・途中・・・だよな」







―――――身を起こし再び手を伸ばす。


しかし、その手が掴まれれば見たくなくとも反射的に友人の目を見る破目になった。







「・・・っ」






そのままさらっと押し倒され、輝明の背中に冷や汗が伝う。


それは明らかに先ほどまでとは違う、友人と抜き合うような対等な雰囲気ではなかった。






―――――片方だけ下がったシーソーが頭の中に浮かぶ。











「おいっ、離せってっ!!」






覆いかぶさった体は簡単に動きもせず、容赦なくシャツから入り込む手の動きは先ほどの遊びとは訳が違う。


これでは行きつく先はペッティングどころかセックスだ。


結論に至った輝明は、しかし、見上げたその目に映る欲望に息を飲んだ。








「・・・・・無理。相当キた」




「お、んっ――――ん」







―――――絡まるその舌の強引さは始めのそれではない。


輝明は強く握った拳で伸しかかる胸を殴りつけようとしたが、振り上げられた腕が止まる。







「・・・テルっ・・・・」







―――――切羽詰まったその声に野志輝明はなぜか拳を振りおろすことができなかった。





End.

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あきゅろす。
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