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< Stray Sheep 6 >








―――――快適な船長室のカウチでデュランは強い酒を煽る。巷で喉と胃を焼くとさえ、言われる強いその酒は男の愛用酒だった。ひりひりと焼ける喉が、男の心地よさを誘う。







「――――どうする気ですか?」



シェイラは机の前に立ってちらりと船長を垣間見た。デュランは乱暴に机の上に足を乗せると葉巻の煙を大きく吐き出す。






「――――奴の仮説に確証はない。だが、今更否定したところで奴は信じないだろうな」





「・・・・では、やるのですね?」





デュランは残された片目を細めると唇の端を持ち上げた。それは到底"笑顔"とは言えないそんな表情だった。








――――――からん。





グラスの中で氷が鳴る。









「――――しばらく様子を見る」



去ろうとするシェイラの背を見ながら、デュランはゆっくりとグラスの中を覗いた。琥珀色の酒が波のように揺れている。





――――――知る必要のないことまで知っている男を生かす訳にはいかない。



しかし、解せない。何のためにわざわざ大人しくここまで付いてきたのか。自分たちに近づく理由は何なのか。あの男を裏で糸引く黒幕がいるのか。




――――生憎、狙われる理由は数え切れないほどにあった。






「―――――シェイラ」



呼び止められた男が振り返る。デュランは滅多に見せぬその顔で、ニヤリと今度こそ笑みを作った。






「――――奴のことを調べさせろ。正体がわかるまでは船から出すなよ」




パタンと閉じたドアから視線を外すとデュランは無意識に黒い眼帯に触れていた。そこにはデュランの出生が隠されている。










――――瞳孔は黒く、虹彩は白い。




世にも奇妙なその瞳はこの世界で、たった二人しか持ってはいない瞳だ。







「・・・・キース・サラハン」




あの男が隠された出生を知っているはずがない。しかし、その近似解を解いてきた。何よりあの男は、胡散臭いとデュランは思う。へらへらと笑うあの面の下で、一体何を考えているのか。









「―――――ちっ」



舌打ちが思わず口に出た。せっかくの酒が、望まぬ客人のせいでまずくなっていたのだ。それも、招かれざるその客人はデュランがもっとも嫌いなタイプの男だったからだ。


狐のような狡猾で相手によって態度を返る。顔では笑っていても、その腹の底では誰かを出し抜くことだけを考えるそうゆう人間だ。







――――まるで、城に居座る権力者たちのように。








ガツンッ!!!







乱暴に机におかれたグラスが悲鳴を上げる。









「――――簡単に出し抜けると思うなよ」





――――どこまでも暗い海の夜景をガラス窓から覗いてデュランは一人ごちていた。




End.

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あきゅろす。
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