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小さくノックし、例の扉を開けると、いつもの如く景観が目の前に広がっている。

―――すなわち、中央のデスクに長い足を乗せた、くわえタバコの色男。

その隣で、ゆっくりとコーヒーを啜るどこぞの王子様。

そして、無表情に仕事を続ける麗しのお姫様―――もとい彼の待ち人である。

「あ、おつかれさん」

ニッコリと微笑んで、西田が帰り支度を始めると、「そろそろ、私たちも帰ろう」と残りの二人も準備を始める。これも“いつもの如く”である。隆也はぼんやりとそれを見とめた。

不意に思い立って、挨拶程度しか面識もない生徒副会長を見た。

柔らかい栗色の髪がかかる綺麗な顔とすっきりとした鼻。確かに白馬の王子様のような男である。やさしく、誠実で、その上、容姿だけでなく頭の中身も優秀、だそうで―――もちろん、これは彼に、惚れに惚れ抜いている幼馴染談であるが・・・。

不躾な隆也の視線に気づき、宮島 優がゆっくりと微笑んだ。小さく会釈をして返すと、隆也は視線を外した。


・・・・春風の強かったあの日。


桜吹雪の中を走り抜けてきた幼馴染は、恋をしたのだと微笑んだ。頬を赤く染めて笑った彼は、見たこともないほど美しかった。

まるで風に舞う桜の花のように・・・・。




「―――じゃあ、閉めようか」

最後の明かりが消え行くと、忽ち不気味な暗さが全てを包み、続いて小さく鍵の閉まる音が耳に響いた。月明かりの中、まっすぐに伸びた廊下を4つの影が進んだ。



――――帰り道、もっぱら話をするのは西田と宮島で、今日も今日とて二人の後ろを歩く隆也は、ちらりと隣を見上げた。しかし、紫煙を曇らす男の顔は、やはり今日も窺い知る事も出来ないのである。




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