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< Stray Sheep 4 >







「・・・へー、海賊って馬にも乗れちゃうわけだ」


キースは自分を囲む馬に乗った数人の海賊たちをおもしろそうに見回した。


酒場で見た独眼の海賊王、巨大な剣で有名な赤髪のガルゴ・バーキン、弓の名手と名高いシェイラ・アルザン他、海賊王の妹で、鞭使いのカミーユ・マックウィン、両刃の長槍名手バン・ドーキンの総勢5名がキースを囲っていた。


その中でも喧嘩好きのガルゴが早速、キースの言葉にむっとした表情を見せている。だが、なぜか乗っては来ない。


キースは首を傾げて見せる。すると、独眼の海賊が進み出て低い声で告げた。



「―――――妙なことを考えるな。おまえには聞きたいことがあるからな」


そう告げるとさっさと街の方へ馬を進めて行く。続くようにして他の海賊も馬を進め始めた。


―――森の中は暗く、海賊たちはランプも持ってはいない。ただ月明かりだけが、彼らの後姿を映し出していた。


キースは近づいてくる爽やかな青年、バンの手をとって相乗りしながら愚痴を言った。



「・・・・どうせなら、あの魅惑の美女がよかったのに〜」



「―――そりゃ、悪かったな」



バンが苦笑する。キースは状況の楽しさに知らず鼻歌を歌いだしていた。








―――――コンドレの街に入る直前、突然海賊たちは足を止めた。



皆一応に険しい顔で森を見つめている。何かが、自分たちの後をずっとつけていたのを彼らは知っていたのだ。そして、それは今、もっとも近づいた。




「―――――狼でしょうか?・・・・それとも」


デュランの横でシェイラの目が光かる。キースは暗い森に光る4つの瞳を見つけて、ニヤリと笑った。






――――来る。


海賊たちが皆構えた時、馬たちの前に二つの黒い物体が飛び出してきた。馬が驚き、唸り声を上げる。前足を掲げ、必死に危険から遠ざかろうとする。海賊たちは馬を宥めて黒い物体見つめた。





―――それは、大きな二頭の黒豹だった。

歯をむき出しにし、暗闇に目を光らせて、海賊たちを威嚇している。通さないように、二頭はうろうろと付かず離れず、海賊たちの周囲を歩き回った。すばやく弓を構えたシェイラにキースは言った。




「―――ちょっとお兄さん、俺の友達、傷つけないでよ」



海賊たちが不審の目でキースを振り返る。キースは、ちょいと失礼と慌てるバンの馬からさっと下りると、口笛を一度鳴らした。


二匹はあっという間にキースに走りより、まるで猫が主人に甘えるように、ゴロゴロと彼の足に頭を摺り寄せた。キースは、苦笑して二頭の頭をぐりぐりと撫で回す。


彼らは主人が危機に会っていると思ったのだろう。人里に入るために置いてきたのだが、結局付いて来ていたのだ。



―――そこまでされちゃ、突き放すことも出来ないか。





「・・・・・全く、おまえたちは困ったちゃんだな〜」



キースは笑うと驚いている海賊たちを見上げた。おそらく、この男たちなら豹を恐れたりはしない。


キースが先頭の片目の男を見ると、男は顎で指図した。キースは颯爽と走り出した海賊王から視線を逸らせて、再びにバンの手を取った。



「・・・・随分と珍しい友達だな」



「――――2人とも美男でしょ?」



のっそりとバンの後に乗りながら、キースは笑った。走り出したバンの馬を追って二匹の黒豹も走り出す。



―――コンドレの街はすぐ目の前であった。




End.

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