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< Stray Sheep 2 >





「―――――で、何で止めたんだ、シェイラ」

ビールを豪快に煽りながら、ムードメーカーのガルゴ・バーキンが横目でシェイラ・アルザンに問いかける。


この海賊団の参謀役を務めるシェイラは呆れたように横の男を見た。



「黒いマントの奥で光る刃物にあなたは気づかなかったのですか?」


ため息をつけ加えられてガルゴの顔が渋る。



「・・・あれは、普通の剣やナイフなどの量産品とは訳が違う。飛び道具です。それも今まで見たことのない形状の武器ですよ。そんなものを持つのは私たちのような海賊や傭兵、賞金稼ぎだけです。それも腕に覚えがあるような人間が持つものですよ・・・・そうでしょう、デュラン?」



問われてデュラン・マックウィンは葉巻を吐き出した。



―――あの度胸の良さと隙の無さだけでも十分、一般人ではない。


店に入ったとき、だれもが自分たちの存在に恐れをなす中、先ほどの男だけが落ち着いていた。否、その場を楽しんでいたのだ。



デュランは鼻で笑ってガルゴを見た。




「――――だから、見たかったんだろう?」



シェイラが呆れ顔でガルゴを見るとガルゴが嫌そうに眉を潜めた。



「ちっ、知ってたのか。・・・・・どれぐらいの強さか見たかっただけだぜ?ま、あわよくばお手合わせ願おうと思ってたけどよ」



ニヤッと笑ったガルゴは仲間うちでもっとも喧嘩好きの男である。毎度毎度、つき合わされるシェイラは苦笑を隠しきれない。



「・・・・・そうでしょうね、あなたの練習相手が出来るのは、私かデュランだけですからね」



「そうだぜ。てめぇら相手にゃ、もう飽きちまったぜ・・・」


ぶつぶつ文句を言うガルゴを尻目に不意にシェイラは真面目な顔で、デュランを見た。



「――――格好からすると海賊や商船の傭兵と言うわけではないでしょうね。・・・・頭からああして布を被るのは、砂漠民の特徴ですから。・・・・・となると――――」



シェイラの言葉に、ガルゴが口を挟む。




「―――賞金稼ぎさ」



うれしそうに残忍な笑みを浮かべたガルゴにシェイラはため息を吐く。



「濃厚ではありますが断定ではありませんよ。第一、北の不毛の地にはまだまだ謎が多いですからね。賊がいるとは聞いていますが、それ以外にも古来から続く都があるですとか、戦士の部族があるなどという伝説もあります」



「ああ、あれか。文明の始まりは北から生まれたって話だろ?」



ビールを豪快に飲みながらガルゴがつまらなそうに履き捨てた。



「――――ええ。優れた文明を生み出し、大陸でもっとも栄えたという伝説の黄金国サンクチュアリの話ですよ。何しろサンクチュアリを作り出したメシア族は、戦いと知恵の女神の恩恵を受けていて、最強の戦士であり賢者でもあったと聞きます。しかし、そうは言ってもそのサンクチュアリはジラハン山の火山と共に滅亡したのだそうですがね」



「けっ、そりゃ作り話だろ?だいたい国のあった形跡なんか見つかってないぜ。なんたってあそこは砂の世界だからな」


「残念ながら、伝説止まりですね。けれど、最近、こんな噂もあるのです。砂漠で一年以上も行方不明だった男が、突然帰ってきたっと。話を聞けば、どこからともなく現れた砂漠民に助けられ極楽の地で暮らしていたと語ったそうです」



「―――――北はどうでもいい。今は東の脅威が問題だ」


鶴の一声に、顔を引き締めてガルゴとシェイラが体を乗り出した。デュランは、この街に上陸するきっかけとなった出来事に思いを馳せた。

この街の事態は軽視できない。おそらく、彼の予想が当たっていれば、事態は恐ろしい局面を迎えていることになるのだ。




「――――それですが、情報では明日の夜、奴らが通るらしいですよ」


シェイラが目を細めて笑う。




――――デュランはただそうかと呟いていた。



End.

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あきゅろす。
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