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< 狼の焦燥 狐の本音3 >







―――――狼という生き物は飢えに強い。





長い間、腹を空かせていようともその体力に衰えはなく人の倍は生きるのだ。






ただそれゆえ。




獲物を得たその時には。









―――――驚くべき食欲を発揮する生き物でもある。












―――――ギシッ。




ギシッ。




ギシッ。






「・・・っ、・・くっ、んっ、・・」





―――――電気のついていない暗い室内に荒い息とベッドの軋む音、そして肉質的な『その音』が響く。


熱気が籠もった部屋の窓ガラスはうっすらと曇り、その背徳的な行為が長く続けられていることを示していた。









――――――窓から入る月の光が蠢く二人の男を照らし出す。











「―――――この俺が・・・・」






―――――低いその声が。





暗闇に溶けるように囁かれれば。






――――その強欲な体は。






歪んだ愛の代償を差し出せと告げるのだ。












「――――――キレてないとでも思ったのか?」









穿つその強さは容赦なく―――――。





ギシッ。




ギシッ。





―――――軋むベッドの悲鳴は止む気配はない。










「――――はっ、オメデタイな」








―――――ただ叩きつけられる感情が痛々しいほどに熱いから神崎卓はそこから逃れられはしないのだ。








ギシッ、ギシッ、ギシッ。





「―――――ぁっ!・・・っっ!」





――――腰に回る手は逃げぬようにしっかりと固定され、衝撃に前のめりにずれていくたびにその体を強引に連れ戻す。


左腕は捩じって後ろに捉えられた卓のその体は右腕一本でかろうじて支えられているに過ぎなかった。








「――――――退学だ?・・・馬鹿が」





―――――耳元で荒い呼吸に交て語られるその言葉が食えないひねくれ者が起こした騒動への怒りを露わにしていた。



数回にわたって追い上げられるその行為に力で対抗していたのは始めだけで、苦しいぐらいの獣の飢えに神崎卓の口から零れるのはいつしか荒い息だけになっていた。








「・・・・ぁ・・」





大きな波から逃れるよう吐息が舞った。





途端。









―――――パンッッッ!!!









苛立ったような乾いた音が部屋に響く。









「――――――値をあげるにはまだ早ぇんだよ」




「くっ!・・・っ・・ぁ」







―――――小刻みに揺らされた体と手加減なく叩かれた臀部の痛みが容赦ない屈辱感を齎した。


しかし、肘打とうとした右腕がなんなく後ろで捕まれば、両手を失った卓に出来るのは齎されるその快楽に歯を食いしばる以外に方法はない。









「―――――――しっ、つこ・・・・・」









「―――――――はっ、当然だろ?」





―――――卓の背後では怒りと欲望に炎を燃やす絶対の君主がただ冷たく目を細めていた。









「―――――首の皮一枚で繋がるような下手な遊び方しやがって・・・」





ぞろりと足元から何かが這い上がる。







―――――そんな声だった。









「―――――火遊びどころか大火事一歩手前だろうが」








ドンッッッ!!!







―――――怒りのままに突き飛ばされた体はなんなくシーツの海に投げ出され、突っ伏した顔にはひんやりとした冷たさを感じる。


解放された両腕に渾身の力を入れて、体を起こそうする卓の股の間から怒張が勢い良く引き出されていった。







――――瞬間。





訪れる。






――――快楽。







「――――――くっ・・・はっ、コワイね、狼さんは・・」



一瞬目を瞑り、熱の解放をやり過ごした卓はしかし、あっさりと体を裏返されて伸しかかる黒い影と対面する破目になった。






―――――見上げたその先で。







狂気に彩られたその瞳が。









―――――体を犯す。









「――――――――黙れ」






―――――絶対零度のその言葉とともに暗い部屋に殊更重い沈黙が満ちていった。









――――重く。






冷たく。







伸しかかる。







――――その静寂。






そこにある語られない"何か"を。




―――――追い求めるように。







ただ見つめ合う二人が。





月の光に照らされて。






―――――無言の時を刻む。










ザァァァァァァ。








―――――――冬を運ぶ冷たい北風が窓の外で哀しい悲鳴をあげるが熱に浮かされた獣たちにその音は遠く聞こえはしなかった。







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