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< The Date Plan >








―――――『デート』





氷川亨はそう名のつくものなら星の数ほどしてきた自信がある。


もっともそこは若い性の元、『フルコース』でと条件がつけば星の数は言い過ぎだろう。








―――――色男の経歴を持つ氷川亨にとって『デート』とは"落とす楽しみ"であり、目的を達成するまでの"御遊び"でもあった。


だから、『これからもよろしくね』的デートが初体験であることにひょんなことから気付いてしまえば、もうそこから頭が離れなくなってしまったのは致し方ないことでなのだ。




―――――車の運転だって何だって『初心者』と言われる者は誰だって緊張しないはずがはない。


そう思ってはみるのだが、如何せん『心の平穏』は遠い彼方なのだ。









『―――――好きです』






―――――弱さも汚れも全て浄化してしまったかのような瞳で一心にそう告げる少年をとても大切に思っている。


そこに『出来れば』なんて謙虚な言葉は誰がつけてやるものかとそう決めている亨はもう是が非でも少年の隣を一生独占する気でいっぱいなのだ。






―――――お互いの心が通じ合って甘い甘い蜜月となるはずだったその季節、陸上と言う名の邪魔者は大いに亨の恋路を邪魔してくれた。


おかげで愛する恋人の隣をどうすれば一生独占できるか大いに計画を立てることが出来たのだけれど、そこはそこ。





―――――やはり甘い甘い蜜月はあってしかるべき別腹の『恋人たちのデザート』なのである。








『――――おい、来週の土日空けとけよ』




だから、やっと忙しいスポーツ少年の日程を確認して先手を打った亨はようやく恋人を思う存分独占する時間を手に入れた。


しかし、どうしたことか、ここ最近も『我儘な王様』特有のその舌打ちが治まる気配はないのだ。









「――――――――ちっ」





―――――なぜなら、『不器用な王様』と『無口な騎士様』は二人でいてもあまり会話がないカップルなのである。


とどのつまり、恋人の趣味は『陸上』以外に全く情報のない元色男には『デートプラン』なるものが思い浮かぶはずもなかった。







――――女の子が好きな夜景も御洒落な喫茶店も到底空を愛する少年が喜ぶとは思えない。


それどころか、食事をするなら何の邪魔も入らない恋人の家に二人で籠もっていたいなんて結論に達してしまうのだから、せっかくの外行きデートの意味が完全に台無しである。







―――――捨て犬を拾って可愛がる優しい恋人にはやはり動物園や水族館がよく似合うのだと誰に言われなくてもわかっている。


きっと連れて行ったなら、はにかんだ笑顔で礼儀正しく『ありがとうございます』とペコリと頭を下げるに違いないのだ。


だけど、その愛する恋人の意識が飼い犬に行くことすら許せない氷川亨にとって自ら邪魔者の巣窟に飛び込むなど論外中の論外だ。


やっと空から愛しい少年を奪い返したというのに子憎たらしい小動物に横から掻っ攫われるなんてまっぴら御免なのである。






―――――うっかり運命の恋を見つけしまってなまじ相手が愛おしすぎるため『我儘な王様』は『年上の余裕』というものをどこかに忘れてきてしまったらしい。








「――――――――ちっ」



突然、不機嫌そうに大きな舌打ちをしたモデル顔負けの色男に前を歩くカップルが慌てて道の脇に避けるのだけれど、氷川亨の視線の先にあるのは申し訳なさそうな顔した彼らではない。




『デートプラン ランキング100!
これで彼女のハートは君のもの!』




――――安っぽいタイトルの街頭ポスターを10人いれば10人振り向くだろう色男が敵のように睨んでいるのを通行人たちが不思議そうな目で見送っていた。




『一生好きです』を強要したうえ相手の家に強制的に居候する『俺様ハート泥棒』はそれはもう大切に思っている愛しい恋人の『ハート』をすでに盗み終えていることに気づいてはいないようである。





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