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< 棒飴とスケートボード >
「―――――――遠藤!廊下でボードを乗りまわすな〜〜〜〜!!」
――――――ムツキの大好きな半眼王子は風紀委員に大人気な問題児である。
いつだって小さなその男前の後ろには無数の男たちを連れているから、ムツキはその様子をぼんやり棒飴舐めながら見送ることにしているのだ。
「遠藤――――――っ!!」
今日もクールなB系スケボー少年は厳つい風紀委員たちに『素敵な朝の挨拶』をしたらしい。
ストロベリークリームのほんわか甘い味をコロンと頬に転がして、ムツキは後方からやってくるガ―という走行音に足を止めた。
―――――残念ながらさっと横をすり抜けて行った半眼王子からは『おはよう』という真摯な挨拶はなかったけれど、一瞬重なったその視線がもっと親密な朝の挨拶を語るからムツキは簡単にご機嫌になってしまうのだ。
だから、ほんわか笑ってコロコロ棒飴を転がすムツキの脇で大きな衝撃音が聞こえてきたとしても、ご機嫌なお人形さんがその音に興味を示すはずがないのである。
「――――うわっ!!」
「って!!」
「―――おい、どけよ、オマエら!」
――――今日は何かいいことがあるかもしれない。
ふふふっと微笑んでスケボー少年が消えて行った廊下を歩き出したお人形さんの後ろには長いの西洋人形の足にひっかかり冷たい床とご対面することになった風紀委員たちが重なりあって倒れていた。
けれど、ポケットに入ってる棒飴を取り出して色とりどりの包み紙にポップな幸せを感じているムツキにはそんなことはどうでもいいことなのである。
「―――――刺激的でちょっぴり甘い・・・」
――――ふんわり笑って青い包み紙の飴を取り上げるムツキにとってこの学園の問題児は『とっても素敵なコーラ味』なのだ。
だから、どうしたって大切に大切に他の飴とは区別しておかなければいけない代物なのである。
End.
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