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< 回る世界 >








「――――――神崎」




―――――甘いテノールの中にもどこか厳しさの交るその声に、放課後の廊下を歩く神崎卓はふっと足を止めた。

振り返った先にいるのは数週間前に転籍してきた噂の数学教師。




―――――ノンフレームのメガネをかけて髪を綺麗に撫でつけたその男は、高身長でインテリ然とした態度に加え、学園の悪い慣習すら微動だにしない余裕を持ち得ていた。

『大人の男』にむろん、お祭り好きなこの学園の生徒たちの興味の矛先がまっすぐ向かったことは言うまでもない。






「―――――Hey,Teacher」





――――神崎卓はニヤリと笑った。







「―――――オマエ、授業出ないんだな」




――――新任ですぐに生徒会顧問に着任した異例の昇進を見せる新任教師はただひんやりとした空気を漂わせていた。







ヒュ――――。






「―――――Do you love me?」


軽く口笛を鳴らした卓はウィンクして軽くおどけて見せる。

しかし、教師はふざけた生徒に腹を立てることもなくただ大人な表情で冷静に諭すのだ。





「――――授業に出ろ。免除だろうと出ることに越したことはない」







――――神崎卓はただ笑っていた。






「――――It's funy!だけど、残念。俺が授業に出ようが出るまいが・・・・」





『――――ギャハハハハ、オマエ、マジかよ』

『マジマジ。ありえんくない?』

『ありえねぇ、ってか、てめぇがありえねぇー』

『ギャハハハハッ』






――――階段の下から聞こえる生徒達の笑い声に卓の目が愉快そうに細められる。








「――――生憎世界は回ってるってよ」






――――ゆっくりと踵を返す背に教師はそれでも声をかけた。





「神崎――――」





しかし、その続きを聞く前に卓は軽く手を振って別れを告げるのだ。





「―――――bye.俺に愛を語るならちゃんと列に並びなよ」






――――階段へと消えて行くその背中を教師の瞳が見送っていた。





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あきゅろす。
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