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< 大馬鹿野郎 >







『―――――純日本人ですか?』


そう聞かれるたびに訂正するのはもう飽き飽きしてんのさ。

返せるのはサービス精神もへったくれもない苦いその笑いだけだ。








『――――カッコいいですね』




――――押しつけられるイメージはひたすら煩わしいだけで、何の感情も生まれやしない。

だから、俺の周りにいるのは他人に興味のない類友だけなのさ。










『昨日、電車にさー。オマエにマジで似てる奴がいてさー』






―――――だが、時には性懲りもなく期待しちまうってそうゆうもんさ。

それこそ、何年も苦しめられてきたってゆうのに繰り返しちまう。








―――――なぁ、人間は"忘れる"ことが出来るから長生きなんだとよ。






だから、期待しちまったのかもな。

オマエの言葉の続きによ。







柄にもなく手に汗握って。

オマエの言葉を待ったんだぜ?






――――とんだ大馬鹿野郎だ俺は。










『――――ハーフだったんだけどさー。マジ似てたんだよ。やっぱオマエ外人系だよな』






――――そうしてまた苦笑する破目になるってわけさ。








―――――ああ、わかってるさ。



オマエは俺の周りにいる奴らとは違うってことはさ。

だから、『お友達』にはなれそうにはねぇと俺ははなっからオマエに近づきはしなかったんだ。








―――――なのにオマエは物おじもせずノコノコ俺に近づいてきやがった。








『―――――――ゴミついてるぜ』




オマエが俺に近づくたび。







『――――似合うな。マジ惚れ直す』




オマエが俺に言葉をかけるたび。








俺は言い聞かせる。







――――オマエ特有の軽言だと。







だが、残念ながら俺の心の半分は淡い期待を抱いてたのさ。








だから、その期待を吹き飛ばすことに懸命で。




――――気づいたらオマエはいなくなってたってわけだ。










はっ、とんだ大馬鹿野郎だ俺は。




――――恋に恋してオマエを逃がしたんだからよ。







とんだ大馬鹿野郎だオマエは。




――――まだ好きだと言ってやしねぇのによ。








いつものようにひょっこり現れて無神経な言葉で俺を傷つけろよ。

いつものように俺に笑いかけて意味不明な横文字並べてとんちんかんな話をしろよ。






――――俺は大馬鹿野郎らしいからな。



またオマエが現れるんじゃねぇかと待っちまってるみてぇなのさ。







――――ったく、オマエはいつだって俺に期待させるだけさせといて。

その期待に応えることなんて一度としてねぇんだからよ。








―――――恋なんて糞くらえ。



俺の半分がそう叫んでる。






だが、もう半分がよ。




――――性懲りもなくオマエを待ってるのさ。





End.

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