Main < GAP -Another- > ―――――――この学園の鬼書記様は天使な顔に似合わず毒吐きが大得意の腹黒お姫様である。 「あのバ会長、勝手に隆也の家に居座ってっ・・・」 学園の天使様と呼ばれる西田智彦は、大好きな幼馴染を一人占めする学園の王様を何しろ目の敵にしている小姑なのだ。 だけど、今日も今日とて帰り道、ぶつぶつと何やら不穏な言葉を呟く智彦を、学園一ハンサムな王子様はニコニコ笑って見つめているのである。 「―――――トモ」 ――――優しい響きで名前を呼ばれると智彦の手はさっと綺麗な指に攫われる。 途端、キッと睨みつけるような冷たい視線が宮島幸に注がれるのだ。 「―――――何ですか、この手は」 ―――むろん、面の皮が厚い陰険腹黒王子様には通じるはずもない。 「―――――トモ」 だから、晴れ渡るような王子様スマイルを向けてくる恋人に智彦は思わずそっぽを向いてしまうのである。 くすくす笑う王子様は残念ながら自分の恋人が究極のへそ曲がりのうえ照れ屋なことを知っている。 「―――――今日は家によってもいいかな?」 だから、これ以上ないくらいニッコリ笑ってお伺いを立てるのは意地っ張りな恋人が意外にも自分の笑顔に弱いことをちゃんと知っている確信犯だからである。 「・・・・・勝手に決めないでください」 ―――返される言葉は強い拒否だけれど、そっと足で地を蹴るその仕草は照れ屋なお姫様が本音を言えない時の癖なのである。 案の定、狡賢い王子様がぎゅっと恋人繋ぎしたその手をそっぽを向いたお姫様が離すことはない。 ――――腹黒王子様は心底嬉しそうに微笑むと目を細めて脇のカメラにウィンクするのだ。 「――――それ、もちろん私にくれるよね」 しかし、その言葉を地獄耳の鬼書記様が聞き逃すはずもない。 はっと顔をあげた智彦の顔がみるみるその冷たさを増して、ぽとんと怒りのコメントが地に落ちた。 「――――信じられない・・・」 ―――――続けざまに飛んでくる靴とカバンをひょいと王子様が避けてしまえば、もちろんその行き先は決まっている。 バンッ!!! 画面いっぱいに靴とカバンが映し出されれば、その勢いに負けてしまったのか、あっさりカメラは地面へと落ちて行く。 ガンッ!! 「あーあ、可愛いトモの永久保存版だったのに」 「――――知りませんっ!!」 ――――真っ黒い画面になったカメラはその後の二人の言葉を録音してはいないけれど、プリプリと怒り出すお姫様を楽しそうに王子様が見守っていたことを目撃者であるお月さまは知っている。 陰険腹黒王子様は何と言っても腹黒天使なお姫様を怒らせるのが大好きな困ったさんなのである。 End. [*前へ][次へ#] [戻る] |