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< 言葉はいらない 4 >
コツ。
コツ。
―――――珍しく静まり返っているセンター内に足音が響く。
今夜は緊急任務がないらしくセンター中央のモニター室には誰もいない。
どうやら夜勤任務者も各々のオフィスに篭っているらしい。
―――――優は薄暗い通路を確かな足取りで歩いていた。
―――2ヶ月前に本部を離れウェヌスに向った。
ウェヌス支部は他の支部に比べエージェントレベルの高い要員が少ないため、優に応援という形で司令が降ったのだ。
――――もっとも向こうでの内容はたいしたことはない。
逆に手持ちぶささに悩まされたほどだった。
――――もともとウェヌスは【理性の街】と呼ばれるほど落ちついた地域で犯罪などほとんどないところなのだ。
優に回って来たのは数回の緊急任務と偉人の護衛、残りはほとんど後輩達への訓練や講習ばかりだった。
その訓練や講習―――特に講習には何度悩まされたことか。
――――元々、あまりしゃべらないことに加え、ウォルフや劉偉のようにうまい話の流れを作れない優は、講習があるたびにサボろうとしては後輩達に捕まっていたのだ。
帰還が決まったときには『二度とここには来るか』と思ったほどだ。
やっとうるさい後輩達から逃れ、本部のポートに戻った時には脱力感と精神的な疲労感でいっぱいだった。
――――これで慣れた自分のベッドで眠れるそう安堵した。
――――だというのに、あろうことか彼の足は本人の意思を無視して歩き出していたのだ。
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