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< 狂気と月と 3 >
――――紅い、紅い毒入りワイン。
黒い瞳はワインを一瞥するとすぐに目の前の翡翠の瞳を捕らえていた。
そこには、何の感情も読み取れない。ただ、深いエメラルドグリーンの深海が広がるだけだ。
―――――優は笑ってグラスを受け取った。
香りに異常はなく、目の前の人物も何の違和感も無い。
――――ただ、勘の鋭い彼には確信があった。
恋人が笑って差し出したグラス。
その中に淫猥な快楽が詰まっていることを。
――――ならば、飲み干してやる。
一滴残さずに、この毒を。
―――口に含んだワインがじわりと熱く燃える。
ゴクリと喉が鳴ればアルコールが喉を焼く。
そして、微笑んだままの確信犯を彼は見た。
――――仮面をした男に喜悦を含んだ本当の微笑みが浮かび上がっていた。
『――――――オマエが罪を犯して地獄へ堕ちるとそう言うのなら、俺は迷わずオマエの共犯者になってやる』
グラスを頭上に掲げて、優は笑ってみせた。
「―――――Cheers」
傾けたグラスから、血のように甘美な毒が喉へと流れ込む。
――――アルコールのせいではない熱を指先の痺れが示し始めていた。
『――――一緒に地獄へ堕ちてやる。どこまでも、どこまでもな』
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