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< Bye >





白。

白。

白。




―――なぜ、こんなにも白に拘るのか。




白いピアノ。

白いソファ。

白いシステムキッチン。

白いベッドカバー。




――――見渡す限り見つかる白。





ゆっくりとベッドで眠る『彼』を見つめる。

神々しいほどに美しい『彼』

白はどんな色にも染まり、だがしかし、その存在を確かに表現する色。






―――穢れなき純粋さ、清潔さ、気高さを暗示する色。

そう確かに白は『彼』の色なのかもしれない。







――――クリーム色のカーテンの間から柔らかい日差しが差し込み、部屋を夜から朝へと一変させてゆく。

ゆっくりと体を起こした優は傍に落ちている服を拾い上げ、ブラックジーンズを履いてTシャツを頭からかぶった。







―――――今日から長期任務が始まる。

今度は一体いつ会えるのか。





―――――優はすっと睫毛を伏せた。


24時間待機の不安定な生活を送る彼らにとって一日中一緒にいることすら難しい。

まして長期任務なら言うまでもない。







――――ゆっくりと立ち上がった優は背後を振り返った。




縋るような翡翠の瞳と切ない黒い瞳が絡み合って溶け込んで。

でも、お互い何も言えやしないのだ。







―――――何を言えばいいのか。


一生懸命考えたところで、この複雑な心を表す言葉などないのだ。







―――そして、また会えない日々が始まってしまう。


お互いの連絡すらとれず、相手が無事でいるのか、それすらわからない日々が。

今度いつ会えるのか確証のない毎日が暗い不安を日々膨らますが、きっとまた解決策なんて見つかりはしないのだ。







―――それでも何も言うことは出来なかった。


お互いわかり過ぎているからだ。





そう、いつだって。







―――もうこのまま二度と会えない。




その可能性を知っていた。






―――――すっと視線を外し何を言わずに優は寝室のドアに向かった。







「――――優」


自分の名を呼ぶテノールは何より愛しい声だった。



――――――だが、振り返りはしないのだ。





ゆっくりと目を閉じると優は無意識に拳を握る。







――――今、振り向いてしまえばこの部屋から出ていくことはできなくなる。




それを何より自分自身が一番よく知っていた。






胸が痛くて苦しい。

この痛みを全て吐き出せて仕舞えばどんなに楽だろうか。







―――――――ウォルフ。









「―――――またな」

ただそっと呟いてキィとノブが回るとドアは開く。






そして、重い足を引きずって彼は再び出てゆくのだ。



――――不確かな日々の中へ。



End.

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