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< 色男の称号 >








『意気地無し』と『無鉄砲』

よりマシなのは一体どちらなのか。







―――問うた答えに狐は笑う。










「―――――付き合ってすぐに別れるなんざ、やっぱてめぇは体目当てのサイテー野郎だな」






―――――おもむろに道を塞いだ影に神崎卓はゆっくりとその視線をあげた。


いつか"馬に蹴られて死ね"とそう喧嘩を売った男の表情には自信のほどが窺える。





―――――だが、"笑い狐"にとって無鉄砲な愚か者は三度の飯より味わい深い獲物なのだ。









「――――――で?」








サァァァァ。






――――廊下の窓から入った一陣の風が笑う色男の髪を揺らしていた。








『体目当てに近づいた最低の男』



どうやら観衆の目の前で"神崎卓"に傷をつけたいらしい。




―――すっと細められたその目が笑う。







「――――――狩ってのはさ、獲物を追い詰めるまでが楽しいのさ」





――――あたかも事実を肯定したかのような色男の態度に周囲にはどよめきが沸き起こり、ざわめき立つ生徒たちの口々からは歓声とも非難とも取れぬ声があがった。

しかし、騒ぎの張本人はその手をポケットに突っ込んだまま首を傾げるようにして笑っているだけなのだ。









「――――You understand?」





―――甘いその声に皮肉めいた言葉をのせて。








―――悪質な噂に誹謗中傷、尽きぬレッテルは色男のステータス。



纏う仮面が今更増えたところでワンナイトキングの腹は痛くも痒くもない。



また一つ神崎卓を飾る称賛が増えた。




―――――ただそれだけだ。



笑う色男の視線がぐっと拳を握る男を嬲っていた。









「―――プレイボーイの言い訳なんざ、誰が聞く耳持つかっ!!真咲に謝れよ」




鼻息荒く怒鳴り声を出す男にざわめく廊下が再び静まり返る。






「――――――僕」





―――おずおずと男の脇から話題の中心人物が現れると廊下に落ちる沈黙は否応なく緊張に達していた。






「――――僕、恨んでなんていないから・・・だから・・・」






――――河野真咲の目には涙が溢れていた。


か細いその声は微かに震え、沈黙を守るその廊下を哀しみで彩るのだ。







――――神崎卓はただニヤリと笑っていた。


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あきゅろす。
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