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< 梟の目 >




―――電気も灯らぬ暗い室内で机に置かれたノートパソコンが青い光を放って椅子に座る男の口元を照らし出す。






「―――――――神崎卓」





そう呟いた男の視線は明るい液晶に映るホストのような出で立ちの男に向けられていた。






――――学生服のブレザーをふしだらに着崩しているのに着こんだシャツすら男専用に作られているかのように思わせる。


程よく筋肉の付いた体のラインはシャツ越しですらその美しさを主張していた。






―――――高い身長に甘いマスク。


時代遅れの長髪すら気にはならないのはその姿が完成されたそれだと目に見えてわかるからだろう。




――――映し出される映像の中、大勢の生徒に囲まれながらも、男に近づく者は誰もいない。



常にふざけた言葉を吐くその男に本能的に皆近づき難いオーラを感じとっているからだ。





――――他にはない一線を隔す何かを持っている。


否応なくその存在を突きつけるのは、男が纏うどこか危険で影のあるその雰囲気なのか、それとも笑う瞳に込められたその強い意思の光なのか。








『――――Come on baby...let the good times roll...』






男の甘い歌声に交って時折、首や腕に付けられた金属が小さく揺れる音が聞こえていた。








「――――ふっ」



―――パソコンの前を陣取った男は思わず鼻で笑っていた。





不意に廊下をゆっくりと進んでいたその男が足を止めてニヤリと笑ったからだ。



―――向けられたその視線はまるで隠しカメラ見ている男へ挨拶でもしているかのようだった。









「―――――だから、君って男が大好きなんだ」






――――暗い闇をその背に呪い梟はくすくすと笑っていた。








『キャー―っ!!今、卓様が微笑んでくれた。ヤバい。どうしよう、マジ泣ける!』


『卓様はやっぱり僕らの卓様っ!!ワンナイトキングは誰のものにもならないんだから!!』


『――ってかお嬢様になんててんで荷が重いね。まぁ、誰にだって荷が重いかもしれないけど。でも、そんな卓様が好きだ――――!』






この学園のNo.1ホストがとんだ食わせ者なのだとようやく気付いた者は一体何人いるのか。






――――呪い梟に言わせれば、今更遅い。





それこそ今やよく躾られた犬のように反生徒会はこの学園の生徒会会計を睨みつけるだけのただの負け犬に成り下がっていた。




――――大抵のことでは縦にも横にも動かない個性派揃いのあの生徒会役員たちの中にあって、非道と謳われる会長を例外にしても、役員たちの目がそれとなく動きを探っている相手は誰なのか、気づけばおのずと答えは出るというものだ。



それでも、ふざけた生徒会会計のその動向に学園の権力者たちが神経を尖らせていることを気づける者は極わずかだった。






――――食えないピエロはいつだって陽気なダンスにステップ踏んでその身に宿す鋭い刃で狙った獲物を切りつける。


だが、笑って回る愉快なピエロに目を取られ、獲物は切られていることにすら気付けない。





――――致命傷に至るその前に血だらけの自分に気づけばいい方だった。


なかには気づかぬ哀れな獲物もいるからだ。






――――表立つことのない会長付きの親衛隊隊長様は未だにふざけた色男に遊ばれたことを根に持っているらしい。


その憎悪に目が曇っているうちは笑い狐にとって愉快意外の何者でもないというのに。







「――――本当に楽しませくれるよ、我らが会計様は」






――――呪い梟は獲物を見つけてうろつく狐に黒いカラスが飛んでいくのを笑って見つめていた。




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あきゅろす。
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