[携帯モード] [URL送信]

Main
< 場違いな桜の木 >



――――憂鬱な梅雨前線の過ぎ去った7月。

露が晴れ、真夏へ向けて一直線に突き進む天気は今日も晴れ晴れとした晴天を空に迎えていた。

春が来れば、その薄桃色の花を満開にして出迎える桜の大木は、今はひっそりと緑の葉を風に合わせて揺らしているだけだ。


きっと彼らは知っているのだろう。




―――この季節が決して自分たちの季節ではないことを。






「―――無用だな」

人波に流されながら、ふと桜並木に視線を止めた少年はぽつりと呟いた。



―――私立蓮見高等学校2年 園田雪夜(そのだゆきや)である。

彼のどこか翳りのある表情の中には、隠しきれない憂いが見て取れ、涼しげな眼差しは凍て付くほどで、彼の冷めた美貌に似つかわしいものだった。



通いなれた学校まで、残すところあと少しという桜坂。



―――彼はそこでじっと場違いな桜の木を凝視していたのである。





[*前へ][次へ#]
[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!