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クールガイの憤怒
―――どんな際どい悪巧みも無駄にエロいその面で平然と笑って済ますタチの悪い男。
それがオマエだ。
なぁ、甲斐。
ふらふら女の周りを飛び回ってはすぐに飽きたと平然と切り捨ててオマエの目はもう違う獲物へと目移りだ。
自分の力量を知らねぇ野郎には周りの青ざめた顔すら気にせずに徹底的にその分の悪さを見せつけてあくどい笑顔で笑ってやがる。
―――だから、ゆらりとゆらりと歩くオマエの姿に格の違いって奴をちゃんと弁えてるお利口さんは間違ってもオマエの興味惹いちゃいけねぇっと知っているんだぜ?
なぁ、ひたすら力づくの恐怖で人の頭を地面へ擦りつける俺よりも、親切そうに人の心に取り入って笑って獲物を嬲り殺すオマエの方がよっぽどタチが悪いんだ。
その嘘くせぇ面に騙される馬鹿を一体何人見て来たと思ってやがる。
なぁ、だからよ。
――――オマエの驚いた顔なんざ、数年ぶりだ。
大抵のことは驚きゃしないオマエがよ。
恐ろしいもん見るような目してこっちを見やがって。
『――――やらせろ』
―――てめぇだって散々女に吐いて来たセリフだろうが。
―――俺は謝りなんてしねぇからな。
それは"後悔"している奴のセリフだ。
俺はな"後悔"なんて胸糞の悪いもん微塵も持ち合わせちゃいねぇんだ。
怯えて泣き喚こうが。
怒って罵声を浴びせようが。
――――あの日、俺は手加減なしでてめぇに突っ込むつもりだったからな。
当然だろう?
5年だ、甲斐。
―――もう5年。
誰も待ったことのねぇこの俺がオマエを待つには十分過ぎる時間ってやつだろうが。
―――オマエの隣で仲良く友達ごっこするのにはもう飽き飽きだ。
さっさと5年分のこの喉の乾きオマエ自身で癒してもらおうじゃねぇか。
――――ちっ。
それをあの阿呆がぶち壊しやがってっ。
腹に入れた蹴り一発じゃ俺の虫の居所はさらさら治まらねぇな。
頭から血流して病院沙汰だと?
――――はっ。
だから、どうした。
知らねぇーな。
――――勝手に壁に頭ぶつけた阿呆1人の行く末なんてな。
――――獲物を狙う肉食獣。
狩の最中に獣の目の前を塞ぐ馬鹿が一匹居たってそれだけの話だろうが。
――――その獣が5年分の飢えを抱えて目をギラつかせてたってのも知らずにな。
だから、なぁ、甲斐。
――――これで逃がれたと思うなよ。
これはほんの始まりに過ぎないのさ。
オマエが俺という男に捕まるささやかなショータイムのな。
――――生憎てめぇの気持ちをカマってやるほど俺はお優しい相手じゃねぇからな。
『冷酷無慈悲な冷血漢』
そう言ったのはオマエだろ?
電話に出たくねぇって言うなら。
しょうがねぇ。
――――無理矢理引きずり出すまでだろうが。
その首根っこを掴んで引き摺り回そうとも。
良く回るその口に無理矢理指ネジ込もうとも。
――――俺はさらさら五年越しの獲物を諦めるつもはねぇんだ。
なぁ、甲斐。
狼煙は上がった。
――――今更俺から目逸らそうったってそうはいかねぇ。
――――俺に灯したこの炎きっちりケリつけてもらおうか。
End.
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