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< 狼の逆襲 2 >
――――白いシャツはいとも簡単に布切れと化す。
神崎卓は全身の痛みに起き上がろうと腕を立てたが、あえなく力強い腕に押し返されてまた床に沈む破目になった。
「―――――何、コーヘー君、強姦は犯罪よ」
体の上に馬乗りになった男は投げられた言葉を無視して押し倒した相手のベルトへと手を伸ばす。
―――オレンジ色の夕日に照らされて綺麗に筋肉のついた上半身を舌が這う。
大きな手で肩を床に押しつけられている卓は自由になるもう片方の腕を伸ばして男の頭を押しやったが、効きはしない。
立ち上がった乳首を男の舌がねっとりと舐め上げた。
――――殊更、見せつけるように。
途端、舌打ちした卓はわざとふざけた口調でおどけて見せるのだ。
「エロイね、コ―ちゃん」
――――しかし、胸元から見上げるように返ってきた視線は怒りに燃えたままだ。
男は一旦顔を上げると、床についた膝で体を浮かせて抵抗する体を無理矢理うつ伏せにする。
「――――俺を怒らせようったってな、今日はのってやらねえぞ。わかってんだろ?俺はキレてる。そのままぶち込んでさっさと終わり―――なんて甘いことはしてやらねぇ」
――――背後から聞こえてくるのはぞろりと這い上がる低い声。
床についていた手に力を込めるが背に乗せられた体重に体を持ち上げることはできない。
「――――っ」
あっけなくその両手すら後ろに取られた卓の頬は屈辱的なことに床へとつけざるを得なかった。
「――――オマエがひぃひぃ言って"入れて"っておねだりするまで、ずっとここに指しゃぶらせてやろうか?」
――――思った以上のキレ具合だ。
マズイと唇を噛んだ卓は囚われた腕に力を込めるが大きな手は外れはしない。
「――――どうしたよ色男。今日は言わねぇのか?」
首筋を下から上へと張った舌が耳元へと寄せられる。
――――そして、悪魔が囁くのだ。
「――――“優しくして“ってな」
肩越しに睨む視線を男が笑う。
「――――そうしたら、ここがとろとろになって俺を欲しがるまで、優しく優しく、慣らしてやるぜ?」
舌が耳の穴を犯す感覚にぞわっと首を仰け反らせた卓に低い笑い声が響いていた。
―――ズボンの中に不法侵入した指が彷徨う感覚に思わず卓は罵り声をあげた。
「――――ほざけよ」
「――――はっ、ほざいてんのはオマエだ。“本気になれ“、そう言ったのはその口だろ?」
耳たぶを思いきり齧られる。
――――指はすでに目的の場所に達しようとしていた。
「俺は本気だぜ?なぁ、いつもいつも高みの見物している狐さんよ」
“本気“に気づいて暴れ出した狐に狼は舌打ちする。
ズボンから手を抜くと暴れる背を床に押し付けて、もう片手で自分のベルトへと手を伸ばした。
「――――今更気づいたって遅せぇんだよ。わかってんだろ。タッパも横幅も俺には勝てねぇ。勝てんのはその減らず口とあざとい頭ぐれぇだってな」
――――バシッッ!!!
乾いた音が空気を切り裂き、革のベルトが机を打った。
「――――本気の狼に狐が勝てると思ってんのか」
―――影になった男の瞳には暗い狂気が宿っていた。
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