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< The best friend >


「――――隆也は、今日も愛する部活動?」

帰り支度の手を止め、隆也はにっこりと笑う西田 智彦を振り返った。

HRの終わった教室では、クラスメートたちが隆也に違わず早々と帰り支度を整えている。呆れた視線に気づいたのか、腐れ縁の対象は微笑んだ。

「うんうん、わかってる。隆也が陸上馬鹿なのは今更だよね・・」

そんなことを言うこのお姫様との出会いは、5歳のときである。

あろうことか隣家のガキ大将は、引っ越して来て初対面の隆也に、「友達になれっ!」と強要したのである。無論、否応無くである。しかし、そんな脅威のお子様も今は天使と騒がれるカワイコちゃんに大変身である。

「・・・・毎日、そんな真っ黒になるまで走って何が楽しいのか理解できないよ。たまには僕とも遊んでくれないとね・・・」

すねたように隣でぼやく智彦を見て、隆也は小さく笑った。

――憎まれ口をたたくこの親友は、隆也に負けず劣らずの芸術馬鹿なのだ。

たくさんのキャンパスで埋め尽くされて、絵の具の匂いが漂う彼の部屋には夢がいっぱい詰まっている。



――――夢見る幼馴染は、将来、画家になって儲けるのだそうだ。



「――――ま、いいけど・・・・終わったら迎えに来てよね」

さっさと踵を返した自己虫は、自分を放って陸上に勤しむ親友が気にいらなくて、下校の迎えを強制するお子チャマなのである。そのお子チャマは、学校広しと言えども、無口・無愛想・無表情の辻 隆也と会話が成り立つ唯一の存在であるともっぱらの噂であった。

ぽつんと残された隆也は、再び教科書を鞄に詰め始める。時刻はあと数分で部活動の始まりの時間を指そうとしていた。






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あきゅろす。
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