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< 偽りの恋人 >





―――早朝の暗がりにはまだ太陽の昇る気配はない。



目を覚ました園田雪夜は時計を確認するとベッドから抜け出そうと体を起こした。




――――しかし、そのスレンダーな体はすぐに腰に回った力強い腕によってベッドへと引きずり戻されるのだ。







「―――――お姫様、お目覚めはまだ先だ」






―――そう笑みを称えて自称狡賢い魔法使いはお姫様に伸しかかる。





「―――――離せ」

拒否の言葉にチッチッチッと指が降られて「残念」と神城怜が笑った。






「――――『離さないで』俺の耳にはそう聞こえるの」




笑った色男は抵抗する体をなんなく抑え込むと嫌な笑みを雪夜に向けた。






「――――ほら、観客にはサービスが基本でしょ?」

ちらりとこちらに目配せする怜の視線の先を追って雪夜が急に青ざめる。





―――ふざけた天才はタチの悪い冗談をも本物に変えてしまう自称狡賢い魔法使いなのだ。



雪夜は本気で暴れ出したが、上に乗った体はびくともしない。




――――早朝の5時半、園部雪夜のベッドは戦場だった。



End.

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