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< 零れたミルク >
―――ねぇ、種が蒔かれてね。
また大きな大きな花が咲く。
水をあげたのは誰なんだろう。
―――ダンスの相手は一体誰なんだろう。
『どうゆうこと!?』
『卓様の次は真田様!?なんなの〜!』
『にっくき転校生に続いて今度は特Aのお嬢様!?』
『なぁ、あの会長、会計に張ってんじゃねーの?転校生の時もそうだしさ』
『確かに、本気だったらブルドーザーっぽいもんな』
『ってことは単純に犬猿の仲なの?あの二人?お嬢様かわいそ〜』
―――嫌な笑顔を貼り付けてコヨーテ様は本日も笑い狐の餌場にお名ありだ。
「――――賑わせてくれるよな、オマエら」
紫煙を曇らせるその探偵は学園の賑やかさに責任を取る立場の男。
「―――覆水盆返らずってよ、どうすんだダーリン」
―――青空に小さく噴き出して神崎卓は食えない笑みで笑って見せた。
It is no use crying over split milt.
ミルクをこぼして泣いても取り戻せないんだよ。
―――だけど。
「―――溢したミルクを取り戻したいなんて誰が言ったよ」
卓は白い紫煙を大きく吸い込んで青空に向かって円を吐く。
白い円が面白いように青空へと登りゆく。
―――抜け目ない探偵の視線がそれを追っていった。
ねぇ、たっぷり注がれたそのミルク。
零さないように細心の注意を払われたそのミルク。
―――あっさり一滴も残さずにぶちまける。
それがひねくれ者ってものなんだ。
許されないとわかっていながら悪さする。
それが天の邪鬼ってものなんだ。
だから。
「――――It's a silly question.愚問なのさ、ハニー」
―――雀の鳴き声が平和に響く空の下、沈黙した探偵と笑う愉快犯が残されていた。
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