Main
< 99%の意地 >
ねぇ、一度決めたらね。
それがどんなに悪いことだって。
―――最後までやり遂げなきゃいけないんだよ。
If you must take poison, you should take the dish of it.
――――いつか転校生が去る前にそっと形の良いその耳に囁いた。
『――――betいくら?』
真っ青に青ざめたお綺麗な顔は最高に笑い狐を楽しませてくれた。
逃げるようにこの学園を立ち去るまで転校生の視線はまるで悪魔を見るように怯えていたのだから。
ねぇ、最高のヒールがいないとね。
映画はとってもつまらなくなるんだよ。
ねぇ、おかずのないご飯なんてね。
ただ味気ないだけなんだ。
――――昼休みの賑やかな廊下で特Aクラスの前には人だかりが出来ていた。
背の高い神崎卓にはざわめきの中心で起こっている出来事が遠目でもわかる。
「―――――意地張るより頼張れね」
――――おいしい獲物を前にしたなら、意地を張るよりプライドを捨てて噛みついた者が勝ちなんだと誰かが言った。
遠目に向けられる射るような視線をただ卓は静かに見返す。
笑い狐の獲物には今や腹を空かせた狼が襲いかかっていた。
「――――You cannot make a silk purse out of a sow's ear.」
――――だが、生まれ持った性は変えられない。
卓は胸ポケットから煙草ケースを取り出すと踵を返して廊下を歩き出した。
天才が1%のひらめきと99%の努力で出来ているというなら―――。
―――ひねくれ者は1%の曲がり腐った根性と99%の意地で出来ている。
「―――――ちっ」
サッと振られたケースから細長い煙草は現れない。
―――――グシャッ。
無残に潰された空のケースが廊下の窓から投げ捨てられて綺麗な放物線を描いた。
[*前へ][次へ#]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!