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< ラプンツェル >
編んだ髪を長く垂らしてね。
お姫様は王子様を待ってるんだよ。
塔の上でずっとね。
――――ただ王子様を待ってるんだよ。
『―――――――おい、真咲、てめぇ、マジどんくせぇな』
『パン買ってくるのを遅いよ〜。待ちくたびれた、ホント使えないね』
『良いのは面だけかよ。ったく、これだからいいとこの坊ちゃんは』
―――件の転校生が去ってから数日後、複数の生徒に囲まれて刃を刺された背中には悲壮という涙が流れてた。
―――ねぇ、ラプンツェル。
待ってるだけじゃ、王子様は手に入らないよ。
ねぇ、ラプンツェル。
待ってるだけじゃ、何も手に入らないんだ。
―――特Aクラスに消えていくその背中には、あの日零していた涙はもう見えない。
"恋人"をクラスまで見送った神崎卓は目を細めて呟いた。
Where force prevails, right perishes
「―――――力が支配する場所では正義は死ぬ」
『――――好きです』
―――ねぇ、立ち上がったラプンツェル。
塔から降りた君を見ていてあげよう。
戦いを挑む君を眺めていてあげよう。
フィナーレを飾る、最後のその時まで。
―――ねぇ、君が塔から降りてまで手に入れたいものは一体何だろうね。
「――――ローマは一日して成らずってね。Good luck,boys!」
ニヤリと笑った色男は長い髪を揺らしてゆっくりと踵を返した。
―――廊下の窓の外には今日も晴れ渡る青空が広がっていた。
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