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ねぇ、人間ってね。
とても哀れな生き物なんだよ。
A stake that sticks out gets hammered down.
自分と違う生き物が怖いんだ。
自分と違う考えが怖いんだ。
だから。
はみ出し者は輪には加われない。
だから。
頭の良い者は表には出てこない。
「――――久しぶりだね」
――――闇の中に浮かぶ二つの瞳は神崎卓にそう笑う。
夕日の逆光になった顔を窺い知ることはできず、ただ弧を描くその唇だけが光に照らされて不気味に映っていた。
「――――わかってる。君からお代なんてとらないさ。僕のお気に入り。いつだってつまらない毎日に花を添えてくれる僕のスターだ」
部屋の片隅でくくくっと笑った男は、出入り口でドアに凭れる無表情の卓を楽しそうに見ていた。
「教えてあげる。河野真咲は―――――――――だよ。ああ、なんだ、知ってるって顔だね」
踵を返すその背中に男は愉快そうに目を細めて笑う。
「――――気をつけた方がいい。最近狼が荒れているようだから」
しかし、止まることなく廊下へと吸い込まれていく背中はただ拒絶の言葉を残していくだけだった。
「―――――余計なお世話だ、梟」
捧げられた言葉に闇に溶け込んだ男はくくくっと楽しそうに笑った。
――――この学園の情報屋は、一度でもターゲットを決めればとことんその情報網で追い詰める執念深い呪い屋だ。
「―――ホント君ってステキだよね。神崎卓」
――――"呪い梟"。
存在を知るものはそう呼んでいた。
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