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< ジャガーノート >
「――――喉元過ぎれば熱さを忘れるのか?その都合の良い頭はよ」
窓際の大きなソファの背に両手を広げて、その長い脚を組んだ男は会計席の神崎卓を見つめていた。
――――その双眸に映る光は怒り。
「―――ふらふら遊んでんじゃねぇぞ、色男」
生徒会長と会計を残して広い生徒会室には今は誰もいない。
――――ドンッッ!!
突然蹴られたローテーブルが斜めに曲がる。
卓はゆっくりと椅子を回転させてソファへと向き直る。
そして、腕を組んで首を傾げるとニヤリと笑った。
「――――コーヘー君。男の生理はみっともないよ」
ふざけた言葉に真田晃平は眉ひとつ動かすことはない。
―――ただ殊更低く、そして凶暴に。
神崎卓に宣告するのだ。
「――――なぁ、俺はこの学園の全校生徒が見てる前で、その減らず口に指突っ込んで、そのままオマエにぶち込んでやったって全然構わないんだぜ?」
卓はただ視線をひたりと晃平に向けたきりだ。
――――本気の狼は笑う狐よりずっとタチが悪い。
"触るな危険"と評されるその男がキレたなら、それは誰にも止められない。
どんな抵抗もどんな障害もなぎ倒すそのジャガーノートには誰も敵いはしないのだから。
ねぇ、"黒"ってね。
とても強い色なんだよ。
何にも混ざらない。
―――圧倒的な色なんだ。
だから、どんな色もね。
必ず塗りつぶされてしまうんだ。
例えそれがどの色にも影響与える"白"だったとしてもね。
その圧倒的な強さにはね。
誰も敵わないんだよ。
「――――意地張って痛いめ見るのはオマエだからな。俺はちゃんと忠告してやったぜ?」
狂気に染まる双眸はただ静かに語る。
―――背後ではカーテンが大きく襞を揺らしてはためいていた。
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ジャガーノート:
圧倒的な力
止められない力
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