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< 逃げる子羊 >
『誰が来ても決してドアを開けてはいけないよ』
子羊はそう言われていたのにね。
開けてしまうんだよ。
そのドアを。
―――そして、獣を迎え入れる。
―――――ガシャンッッッ!!!
落ちたグラスがフローリングに砕け散るのを神崎卓の瞳が笑って見ていた。
「――――ご、ごめんなさいっ!」
慌ててソファから体を起こした子羊は服の乱れを押さえてドアへと走って行く。
――――まるで飢えた獣から逃げるように。
「――――お嬢様はお熱いのがお好きってね」
卓は押し倒すと真っ青に顔色変えた子羊を思い浮かべてニヤリと笑った。
『誰が来ても決してドアを開けてはいけないよ』
そう言われたならね。
開けちゃいけないんだよ。
そのドアを。
――――ほら、獣が中に入っちゃった。
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