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< 泳ぐ魚 >




「―――相変わらず落ち着かねぇな、ダーリン」


青空の下、お気に入りの場所にふらっと現れたお節介焼きのコヨーテはそう呟いた。


神崎卓は軽く鼻で笑ってふーっと紫煙を吐き出した。




「―――落ち着いたら、the end」



――――そうして、あちらこちらで巷を騒がせる悪戯好きな"狐"は笑う。



風紀委員長に世話ばかりかける問題児は全く悪びれた様子はない。

いっそ潔いほどの開き直りにいつも振り回されることになる男はしかし、何も言葉を返さなかった。






―――ねぇ、ある魚はね。



泳ぎを止めたら、死んでしまうんだよ。

だから、一生死ぬまで泳ぎ続けるんだ。



毎日毎日、懲りもせず。

ずっとずっと泳ぎ続けるんだ。



ねぇ、それは、まるで"道化師遊戯"を続けてるさながら"誰かさん"のようでしょ?


ねぇ、それは、まるで"退屈な日々"を嫌ってるさながら"ひねくれ者"のようでしょ?






「―――ハニー、俺、回遊性だから止まったら死んじまうのよ」




―――唇に煙草を挟んだままぼんやり空を見上げる同級生はただそう目を細めて笑っていた。


言葉遊びの相棒は「知ってるさ」と同じく空を見上げて返すだけ。




――――外階段の踊り場で紫煙をくもらせる男達にその後の会話は一切ない。



ただ雀の平和なさえずりだけが、その小さな空間に漂っては消えていった。




―――平和な平和なこの学園のいつもの情景がそこにあった。





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