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< The may >
満開の桜が儚く去った5月。
静まり返った放課後の校舎内では、さよならを告げる夕日がオレンジ色の光で辺りを包んでいた。
今だに着慣れないブレザーの制服に身を包み、青年は大きなドアを目の前に立ち尽くす。
そろそろ、痺れをきらした待ち人が怒り狂っているかもしれないのだが、目の前の大きなドアに、どうしても躊躇してしまうのだ。
「―――――ふぅ」
何度目かのため息が青年から漏れる。
―――毎日このドアと睨めっこをしていると思うと小心者の自分が恨めしいばかりである。
異性を前にするより、このドアの前に立つほうが緊張するというのだから、思春期の若者としては大変に不毛だ。
――――――よし。
小さく拳を握ると、ここに立ってから30分後にしてようやく青年はドアノブを掴んだ。
さらっと日に痛んだ赤い髪が揺れ、ドアの中に消えゆく。誰もいなくなった廊下は再び放課後の静けさを取り戻した。
―――睨めっこに付き合わされたドアのプレートには、“生徒会室”と素っ気無い文字で記されていた。
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