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< The retreating figure >




――――この学園の君主たちはやはりおつむが弱いのだろうか。


頭はそれほど悪くないはずなのだが、その行動は結構安易である。

他人の成績表を思い浮かべてこの学園の優秀な"書記様"はそう失礼なことを考えていた。




「あっ・・ぁっ・・・あん・・・」

放課後の保健室から漏れる喘ぎ声にピタっとドアを開ける手を止めていた智彦はくるっと踵を返して歩き出す。

そして自分はなんて"大人"なんだろうと頷きながら、今は最中の"王子様"に心の中で恩着せがましく"御礼"をねだってみるのだが、きっとその"御礼"は返ってはこないのだろう。





―――この学園の"王子様"は爽やかなイケメンなのだが、いかんせん、悪友の"王様"よりもよっぽどの好色なのだ。

男も女も見境なく手を出しては、簡単にぽいっと捨てる所謂"節操なし"というやつである。

見た目に表れない分、あの色男な"王様"よりもずっとずっと重罪なのではないかと智彦は推測している。




――――もっと気付かれないようにする方法はいくらでもあるだろうに。



あの"王様"にしろ"王子様"にしろ、この学園の君主たちは頭がいいのか悪いのかわからない。

この学園の"お姫様"が、この時、そう"残念な人"のレッテルを貼ったことを当の二人は全く知らなかった。



―――もっとも今や"学園の騎士様"に骨抜きで、腑抜けになった"王様"には、かつての色男の影すらないのだから、未だにステディな恋人を見つけられない"王子様"と一緒にされては、あの"王様"でさえ憤慨することだろう。



静かな廊下を鼻歌歌いながら歩き出した智彦は幸せそうに笑う無口な幼馴染を思い出してくすりと笑った。




――――きっと"王様"の色男経歴に終止符を打った当の本人はその事実にさえ気づいていないに違いない。


テスト用紙で軽く切ってしまった指を押さえて智彦は窓の外に浮かぶ大きな雲を見つめながら上機嫌で生徒会室へと向かっていた。


一緒にいると気づまりな"邪魔者"がいない分、きっと今日の仕事は順調に進むこと請け合いだ。





――――今頃、あの陸上馬鹿な"幼馴染"は今日も懲りずに空をめがけてジャンプしているのだろう。


空好きな"幼馴染"を再び思い浮かべてふふふと笑う上機嫌な智彦は、だからその後ろ姿をこの学園のタチの悪い"独裁者"が見ていたことに気づかなかったのである。




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