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< The news >




―――雪どけを過ぎて、道端にタンポポの咲く季節。

数日の暖かな日和が続いた街は人々の笑顔に包まれている。小高い山の上に気づかれたマイホーム群の南町も例外ではない。誰もが春の訪れを喜んでいたのだ。



―――特に真っ白な壁が美しい西田家に住む1人息子は、毎日毎日窓によじ登り、今か今かとその時を待っていた。



数日前、少年の母親が幼稚園を嫌う息子にそっと教えてくれたのだ。





『――――春になったらね。智君には素敵なお友達がやってくるのよ』



それから毎日少年は窓によじ登っては、じっと外を覗いているのである。




―――微かに聞こえる人の声を聞きつけて、家の前の道を真剣に見つめる。見知らぬ車が一台止まっているのを見て、少年はドキドキとその時を待った。





――――西田少年はひとつ、心に決めていたのだ。



"素敵なお友達"がやってきたら"一番の友達"になる。


そして、仲良しのお母さんやお父さんが毎朝しいているように自分も"大好きの証明"をその子にしてあげるのだ、っと。




「―――――あっ!・・・・・・・」


パタンと開いたドアから女の人が降りてくる。そして、その後ろから少年と同じくらいの子どもが降り立った。さらさらの黒髪を揺らす男の子は、少々鋭い目元をしていたが、それを抜けば色白で綺麗な日本人形のようである。


西田少年は慌てて階下へと走り出した。





――――もちろん"素敵なお友達"に一番初めに挨拶するためであった。




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あきゅろす。
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